はじめに
年間支出額をざっくりと把握する
次に1年間の家計支出を把握してみます。先ほど1年間の貯金額が判明しているので、「1年間の支出額=年間可処分所得額(税・社会保険料を除いた手取り収入)-1年間の貯金額」と考えることで、簡単に計算できます。
年間可処分所得額は、12月の給料明細と、12月の最後の給料もしくは賞与時に渡される源泉徴収票から確認することができます。
(1)源泉徴収票の支払金額を確認。いわゆる額面年収です。
(2)社会保険料等の金額を確認。給料・賞与から控除された厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料など社会保険料の年額です。
(3)源泉徴収税額を確認。これは、本年分の所得税の金額です。
(4)12月の給与明細から住民税の金額を見て、12倍することで住民税額を概算します。通常住民税は6月から金額が変わるので、正確に計算したい場合は、1月から5月までと6月から12月までを分けて計算します。
(5) 以下の計算式にあてはめて算出します。
年間可処分所得=額面年収-(社会保険料+所得税+住民税)
相談者様の場合、ご自身とご主人様の可処分所得額を合計すると590万円になりました。1年間の貯金額は約53万円だったので、年間家計支出額は590万円-53万円=537万円になります。
このうち、家賃96万円(8万円×12ヵ月)と食費や日用雑貨などの共通生活費120万円(10万円×12ヵ月分)は、支出目的が明確になっていますが、残りの321万円は、毎月夫婦それぞれが自由に使っているお金とボーナス時の買い物や旅行費用と考えることができます。通信費や被服費など、必要な資金も含まれると思いますが、それでも、自由に使ってしまっている金額が多いと思います。
DINKSは、どのくらい貯金している?
相談者様の場合、年間の貯金額が約53万円で、貯金目標の100万円を残念ながら達成していませんが、もし仮に100万円を達成していたとしても、その貯金目標で大丈夫なのでしょうか。
参考となる統計データをお示しします。平成26年全国消費実態調査から、DINKS世帯の夫の年齢階級別の家計状況を見てみましょう。ここで注目するのは、金融資産純増率と貯蓄現在残高です。
まず、貯蓄残高ですが、夫が30歳未満を見ると425万円になっています。相談者様の場合、昨年、ご結婚されて、出費が多かったとのことですが、平均額425万円より少ない金額です。これからしっかり貯めていかなければなりません。
貯蓄のペースは、金融資産純増率を見ます。金融資産純増率は、一言でいうと可処分所得(手取り)に対して、どのくらい金融資産を増やしたか、その割合を示すものです。以下の計算式で表されます。
金融資産純増率=〔(預貯金-預貯金引出)+(保険掛金-受取保険金)+(有価証券購入-有価証券売却)〕/可処分所得×100
夫30歳未満、30歳代は23%前後を示しているので、平均並みの貯金目標とするならば、年間可処分所得590万円×23%=135万円が貯蓄目標の目安となります。現在の年間貯金額は53万円なので、年間82万円が家計改善目標となります。たとえば、毎月4万円×12ヵ月+ボーナス34万円など、毎月分とボーナス分の割合を決めて、現在の支出から抑えていく必要がありそうです。
感情で伝えるだけではなく、数字で示すことも必要
これまで統計データから平均的な貯金のペースを見てきました。けれども、実際に必要な貯金のペースは、ライフステージ(年代)によって異なりますし、相談者様ご夫婦が、将来、どのような人生を送りたいかによっても変わります。
DINKSの夫の年齢階級別の家計収支でも30歳未満、30歳代の金融資産純増率は、20%超をキープしていますが、40歳代になると貯金のペースが一旦落ちます。50歳代になると老後を見据えて、またペースを上げていることがわかります。
ご主人様は、そんなに心配しなくても良いと楽観的に考えていらっしゃるようですが、なんとなく不安だと伝えるだけでは、あまり真剣に向き合ってくれないかもしれません。お二人の家計状況を統計データの平均と比較すると、貯金額も貯金のペースも下回っているという事実を、きちんとした金額で示すことで、少し気持ちが変わってくれるかもしれません。
今回の簡単にできる家計決算で、現状を把握し、来年は夫婦協力して家計管理に取り組めるようになるといいですね。
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