はじめに

米国の株式相場がしっかりした値動きとなっています。ニューヨークダウ平均は12月23日に2万8,551ドルまで買われて、史上最高値を更新。2018年末からは22%値上がりした計算です。

堅調な展開の背景にあるのは、世界景気の回復への期待。米国と中国の通商摩擦激化に対する懸念の後退が、株価上昇を後押ししています。


市場にここまで安堵感が広がるワケ

米中協議は両国間の“1次合意”が成立。米国が中国に対して12月15日から課す予定だった総額1,600億ドルの中国製品を対象にした制裁関税第4弾の見送りを決定しました。9月に発動していた1,200億ドル分の制裁関税についても、税率を従来の15%から半分の7.5%へ引き下げました。

特に15日からの実施が見込まれていた第4弾をめぐっては、多くの市場関係者が行方を注視していました。スマートフォン、ノートパソコン、ゲームなど米国の消費者に幅広く受け入れられており、しかも中国以外での代替生産ができないとみられる製品が少なくなかったからです。

制裁関税実施に伴って中国からの輸入が減少すれば、米国内の年末年始の商戦にも大きなダメージとなり、同国景気を下支えする個人消費も変調をきたしかねないとの不安がくすぶっていました。

マイナス金利のドイツ国債が売れまくる

もっとも、株価は10月上旬からほぼ右肩上がりの展開。外部には制裁第4弾への懸念だけでなく、英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」をめぐる混乱、香港の大規模デモなど懸念材料が山積していました。米国内でも2019年10~12月期企業収益見通しの下方修正など不透明要因があったにもかかわらず、市場参加者の間では強気ムードが支配的でした。

背景にあるのは、世界的なカネ余りです。主要国・地域の中央銀行は金融緩和姿勢を維持。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で7月から10月にかけて3回連続で政策金利の引き下げに踏み切りました。足元は利下げ休止状態ですが、少なくとも再び、利上げへと舵を切る気配は感じられません。

欧州中央銀行(ECB)も9月に開いた理事会で、量的金融緩和政策の再開を決めました。その是非をめぐって激しい意見の対立があった中で、当時のマリオ・ドラギ総裁が押し切った格好です。

低金利下で、企業の借金は急増。米国企業の債務残高は約15兆8,000ドルと、過去最高の水準に膨れ上がっています。マイナス利回りの債券も世界全体で一時、17兆ドル規模に到達しました。

ドイツの10年物国債の利回りは現在、マイナス0.2%前後。理屈上は、欧州屈指の経済大国の国債におカネを寝かせていると、10年後には元本が目減りして手元に戻って来る状態に陥っているのです。

むろん、買い手に満期まで保有するつもりなどないでしょう。ジャブジャブとあふれたマネーが量的緩和による価格上昇(利回り低下)を狙って、「安全資産の代表」ともいうべき金融資産に流れ込んだとみられます。

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