はじめに

――パワハラは感情の問題だと。

理屈の問題だったら、解決は簡単なんですよ。厚生労働省のデータでも従業員向けの相談窓口で多い相談は、メンタルヘルスではなくパワハラがトップです。パワハラが職場でいちばんの問題になっているということは、パワハラが解決しにくい問題であるということ。なぜ、解決しにくいかというと気持ちの問題だから。そこに対応していくことが、パワハラをなくすことにつながります。

――法律ができてもパワハラはなくならない、とはそういう意味なんですね。

本来、法律というのは罰するためのものではなくて、生活が豊かになるためにあるはず。パワハラ防止法は健康で安心して働ける職場づくりのためのものであり、個人を尊重し、多様性を受け入れるダイバーシティとか、本来的な職場になくてはならないものが実現できていなかったから、法律ができたわけです。

法律に縛られるのではなく、理想に向かって何かをしていけばいいのであって、アウトかセーフかではなく、それが適切なマネジメントなのか?それで部下がやる気になるのか?というパワハラとは反対の概念から考えなくてはいけない。

――パワハラとしてはセーフなのかもしれないけれど、やる気をなくす指導というのは確実にありますしね。

「これはパワハラになりますか?」「指導ですか?」と執拗に聞く人がいるんですよ。どうして、そんな、ギリギリのラインで部下と関わろうとするのか。そうではなく、部下がやる気になるような関わり方というのを考えていけば、まちがいなくパワハラの領域まで行きすぎることはなくなります。

まだまだ、「甘えは許されない」「鍛えてやろう」といった昭和的な価値観が残っている人は少なくありません。コミュニケーションに対して世代間の格差があるわけですが、自分の伝えた言葉が相手にどう伝わっているのかを意識することは大切ですよね。部下から「頑張ります!」という言葉を引き出すには、どう声をかけるのがいいのか?を考えれば、グレーゾーンからかなり離れるはずです。

※グラフ出典
平成28年 厚生労働省 『職場のパワーハラスメントに関する実態調査』

【プロフィール】
和田隆

大学卒業後、全日空系旅行会社、最大手スポーツクラブ運営会社で主に商品企画を担当。
職場のメンタルヘルス問題が深刻化する流れの中、心のケアの重要性に注目し、メンタルヘルスケア業界(EAP会社)に転身後、メンタルプラス株式会社を設立。現在、カウンセラー、EAPコンサルタントとして、職場のメンタルヘルス対策、ハラスメント対応の助言および対応、カウンセリング、職場復帰支援、CISM (緊急時ストレスマネジメント)、キャリア支援等、年間相談実績は600件以上、教育研修講師として、大手企業を中心に教育委員会、官公庁、病院等に対し、年間200回の出講実績がある。著書に『パワハラをなくす教科書』のほか、1月31日に『最新パワハラ対策完全ガイド』(いずれも方丈社)が刊行

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