はじめに

行動を漏らしてしまう

「携帯の他に、財布、書類もなくしちゃった」

実は、この3点を出すのがミソなのですが、のちにわかります。

「今日、家にいる?」と高齢女性に尋ねます。
「うちにいるよ」
「ほんとに、ずっといるの、1人で」
「そうだよ」

そして「連絡があったら、対応をよろしくね」の言葉を残して、電話を切りました。

ここで、高齢女性は「家1人でいる」ことを教えてしまいました。今日一日の行動を知られてしまうことは、とても危険なことなのです。

30分ほどして、落とし物センターを名乗る男から、詐欺の本電話がかかります。

「今回、落とされたものは、3点ありまして、携帯電話と、お財布と、書類になっております」
「ああ、そうですか」
「まだ、見つかっていないが、携帯と書類になります」と言います。

「そうですか」と答える高齢女性に、男は「携帯に電話してしまうと、悪用される恐れが大変多くなってしまうんですね」と、孫の携帯電話には連絡しないように、釘を刺します。被害者が、なぜ本当の息子や孫になぜ電話をしないのか?と思う人もいるでしょうが、実は、詐欺犯は巧みに本当の孫や息子に電話をさせないように仕向けているからなのです。

電話を切ると、間髪入れずに、孫を騙る男から電話があります。

「電話あった?」
「今、電話があったよ。落としたの見つかったってよ」
「何が見つかったって?」
「財布と、携帯とねぇ、書類が見つかったって」
「全部見つかったって」
「うん」

しかし、高齢女性は聞き間違いをしてました。これは詐欺犯にとって、都合の悪い事態です。そこで、男は「確認する」と言って、一端、電話を切ります。

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