はじめに
本題を切り出す
再び、孫から電話があります。
「携帯と書類は見つかってないって。財布だけだって言ってた」
「そう」
そして、詐欺の本題に入ります。
「ちょっと、その書類がさぁ、仮想通貨ってわかるかなあ」
「わかんないよ」
男は皆の金を集めて、仮想通貨を買っていたと説明します。
「で、それの換金、今日で、それの書類をなくしちゃったのよ」
「今回、僕がお金預かっていて、その書類をなくしちゃって、今、確認したら金曜日に再発行ができるって言ってて、ただ金曜日に再発行されて換金できたとしても、お金を払わないといけないのは今日なんだよね。ちょっと今、困ってて」
電話をかけているのは、日曜日です。すぐにお金を準備しないといけない、というのです。
「いくら?」
「かなりでかい額になっちゃうから、急いで埋められるような額ではないんだけど。だから、ちょっとお金借りたりもしなきゃいけないかなと思ってて」「結構な額」
「100万くらいかかる?」と高齢女性は聞きます。
詐欺犯は「いや、もっともっともっと」と言います。
ごく自然な形でお金の話を振っていきます。多くの人は詐欺の電話というと、「○○万円を貸して!」と一方的に言ってくると思いがちですが、相手に金額を言わせるように誘導することも多いのです。
しかし、高齢女性は「私なんかとてもじゃないけど、立て替えできねぇや」と言います。すると、詐欺犯は、「だから、全部じゃなくて、ちょっと貸せないかなあと思って」と、お金を釣り上げるのをやめました。
「私は年金暮らしだもんよ」
「いやぁ、わかるよ、100万とかでも借りれないかな?」
「貸してやっても10万位くれぇだなぁ」
さらに、男は高齢女性を銀行に行かせようとしますが、それも難しいとわかると、
「そうだよね、わかった、じゃあ他も当たってみるね。」と、電話は切れました。
今回、1時間のうちに5回電話があったように、詐欺ができると思えば、一気にしかけてくるのです。高齢女性が「10万円ほどしか渡せない」と答えたので、事なきをえましたが、もしこれが100万円以上でしたら、間違いなく詐欺犯は家にやってきて、お金をだまし取ったことでしょう。