はじめに

まちづくりが“啓蒙活動”ばかりになる理由

――「まちづくりのために地域通貨を使う。しかし、お金の代わりにしない」というアイデアに至るまで、どんな思考のプロセスを? 結構、思い切りが必要だったのでは?

カヤックが「鎌倉資本主義」の考え方をかかげてから2年くらい、様々な地域で話し合いを重ねてベースはできました。しかし、いざ、SDGsなどの社会活動やまちづくりに市民参加を促そうとすると、大体、啓蒙活動になってしまうという問題に直面しました。なぜなら、まちづくりは行政の仕事で、市民や民間がするものではないと思われているから。

これを変えようとしてイベントやワークショップという方法で啓蒙したり、意識付けを始めてしまう。でもそれでは、たくさんの人に加わってもらうことはできないんですよね。

もちろん啓蒙活動は大切です。一方で、啓蒙活動は響く人には響くけれども、実際にまちを良くする行動には繋がりにくい。つまり、社会善たるものや、意識高い系の人だけの仕組みでは広がりに欠ける。かといって、面白いとか楽しいだけでもダメ。そこで、まちづくり活動そのものが面白い体験として提供されるようする。そういう方針になりました。

例えば、まちのコインに「集めて、使う」というゲーム性を持たせることで、楽しくたくさんの人に参加してもらえるようするなどです。ゲームやエンタメ事業は、そもそもカヤックの主軸事業なので、そこは我々も発想はしやすいところでした。

4ゲーム性をもったまちのコインのデザイン

お金ではない「何か」に

――今後の予定は? 今年は、福岡県・八女市や神奈川県・小田原市でもまちのコインの実証実験を行うと聞いています。

まず、次は小田原市で実施します。鎌倉市と同様、小田原市もSDGsに取り組むSDGs未来都市に選定されているので、こちらもSDGsつながりポイントの取り組みとして進めています。鎌倉市に関しては、次のステップを関係者で話し合っています。

ただし、同じつながりづくりといっても、「必要なつながり」は地域によって違います。それぞれの地域特有のつながりづくりを地域のみんなで考えて、地域を開いていく。地域を開くといえば、将来的には、まちのコインを使っている市や町同士での力の貸し合いのために、円ではなく、まちのコインを使うといったことも考えられるかもしれません。

――昨今、資本主義の行き詰まりがよく話題になります。社会全体がまちのコインのように「お金の代わり」にならないもの、「お金では得られない何か」を求めている雰囲気はあります。

ある程度、経済的成熟が進んできて、もっと別の価値観を社会に持ち込みたいというムードがあります。鎌倉資本主義という考え方もまさにそうです。ただし、まちのコインは日本円が苦手な分野の価値交換を手助けする、いわば単なる道具です。そういう意味では、ポスト資本主義の金の卵にはならないと思うのです。単なる促進剤かもしれません。

――地域通貨は「地域のため」と善意で協力してくれる店などに、一方的な持ち出しが増えたりしやすい。その点の注意も必要です。

高い意識によらない、面白がれる社会貢献やまちづくりに多くの人が参加し、体験してもらえるきっかけを提供できれば、うれしいと思っています。


昨年は、「キャッシュレス元年」と言われるような年でした。政府は政策としてキャッシュレス促進を掲げ、次々と新しい電子決済サービスも登場。消費増税をきっかけに各社は大規模なポイント還元キャンペーンを実施し、この流れに拍車がかかったように見えます。しかし、早くも還元のための予算は不足。消費増税による消費冷え込みも明らかになりつつあり、「お金」そのものが回らなくなり始めている気配がします。そうなったときに、人々が次に頼りにするのは何か? 「地域の人とのつながり」である可能性は大いにあります。

今回のまちのコインの実験は、キャッシュレスの別の意味や未来を示唆しているように感じました。

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