はじめに

「電車でどうぞ」と呼びかけ

環境アクティビストの批判を浴びる各航空会社が、生き残りをかけて力を入れるのが、鉄道との連携です。オランダのKLM航空は、アムステルダム―ブリュッセル線を減便して、アムステルダム・スキポール空港に直結している鉄道駅から「電車でどうぞ」と呼びかけ始めました。両都市の距離は約200キロ。東京から長野ぐらいの距離です。

こんな短い路線を両都市の単純な移動に使う人はいません。日本でいえば、「成田空港―中部国際空港」線のような乗り継ぎ客専用便のような存在です。例えば成田からアムステルダムを経由してブリュッセルに向かう乗客らが利用します。KLMは乗り継ぎ専用のブリュッセル便を減便する代わりに鉄道会社と提携しました。

空港からブリュッセルに直行する列車の切符を航空券とセット販売することで、この区間の乗り継ぎ需要を鉄道にシフトしようと試みています。環境対策をアピールできるうえに、空いた発着枠をほかの路線に回せるメリットもあるので、いずれは鉄道に完全移行するかもしれません。

航空券の一部として欧州鉄道の切符を組み込むサービスは、JALやANAなど日本の航空会社でも導入されています。特に、ANAは同じスターアライアンスメンバーのルフトハンザ航空と共同でRail&FLYサービスを提供しています。

日本とドイツ往復のANA国際線に接続するドイツ鉄道の区間を、航空券の一部として追加料金なしで利用できるという大変魅力的なサービスです。飛行機で同じ区間を移動したら、燃油サーチャージや「グレタ税」などが加算されますが、鉄道の場合は無料。しかも、鉄道区間もルフトハンザ航空で移動したとみなされマイルも加算されます。

ANAとルフトハンザのように無料とまでいかなくても、航空券の一部として鉄道の切符を購入できるサービスは各航空会社が用意しています。鉄道会社もLCCのように早期購入、変更、キャンセル不可の割引運賃を用意しています。航空券とは別に鉄道の切符を割引運賃で購入した方が、航空券とのセットで購入による割引運賃よりもお得になるケースもあることも少なくありません。

仮に少し割高になったとしても、鉄道の切符を航空券の一部として発券することには大きなメリットがあります。それは飛行機が遅延して乗り継ぎ予定の電車に乗れなかった場合の対応です。航空券の一部として鉄道の切符を購入しているのですから、飛行機が遅れて乗り継ぎに失敗した時と同様に、後続便への振り替えなどに柔軟に対応してもらうことができます。

4月から「グレタ税」で航空券を値上げするドイツですが、その引き換えに1月1日から長距離鉄道にかかる付加価値税(日本でいう消費税)を下げて、鉄道運賃を実質約1割値下げしました。フランスやドイツに追随して「グレタ税」を導入し、鉄道を値下げする国も出てくるでしょう。Omioという航空券、鉄道、バスの料金を比較検索できるサイトも登場しました。グレタさんを好きか嫌いかは別として、お得に欧州旅行を楽しむためには、鉄道をうまく使うことが大切になりそうですね。

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