はじめに

中学入試と高校入試は待ったなし

<モリの目>(森上展安)

タカの目さん、あけましておめでとうございます。読者の皆様、今年もよろしくお願いいたします。

さて、新年のテーマは、2020ということで、令和元年にちなんで話せばさしずめ今年は新指導要領元年、というに相応しい年ですね。

理由はタカの目さんのご指摘通りで、10年ごとに改訂されるナショナル・カリキュラムがその年を境に完全に実施されるからですね。もともとはこれと同時に大学受験の仕組みも変える予定にしていましたが、ナショナル・カリキュラムが高校まで完全に実施される2024年度入試からにしよう、と政策の大転換(?)が昨年末にあったのは衆知の事実です。

大学入試はさておいて、中学入試と高校入試は待ったなし。教えられることが変わってしまうのですから入試もこれに添わなければフェアではありません。

小学校完全実施が2020「年度」です。「年度」とありますから実際の新課程を学習した小6生が中学受験を迎えるのは2021年2月になります。だから2020年2月にある中学入試はその1年前。今入試は旧課程で逃げ切りできる世代なわけです。

また、高校入試ですが、中学完全実施が2021年度、つまり2022年2月~3月の入試から対応となります。つまり今の中1生の高校入試から新要項入試となります。

東京都は独自で英語試験の準備を進めている

英語入試4技能化で大学入試は迷走しているのを傍らにみて、高校入試では東京都が着々とスピーキング・テスト実施に向けて準備を重ねています。

今のところの計画によれば、11月に大学等の施設で中3生対象に都立高入試に活用すべくCBT(コンピューターによるテスト)で各人がコンピューターと応答をしてスピーチしていくテストが実現しそうです。

検定のようなテスト(つまり基準準拠の絶対評価)に設計されている、とのことで内容も学習指導要領に沿った内容に作成されているようです(つまり既存の民間検定は使用せず、都教育庁が民間に発注して高校入学用にスピーキングの絶対評価が可能なものに開発されたもの)。

東京都はこれを私立高校の入試に利用してもよいし、他府県の公立・私立高校が利用してもらってもよいとしています(開発費がかかっていますからなるべく多くの利用が見込めればその足しになりますし、何よりデータが多く集まり次年度以降より良い評価にもつながることでしょう)。

つまり高校入試における英語の4技能評価は可能な状況になっている、といってよいと思います。―ここから先はモリの目の勝手な推測ですが、都立高には都立中高一貫校もあり、そこでは入学に際して適性検査が行われています。

現状では英語の検査はありませんが、同じ公立一貫校で言えば、さいたま市立大宮国際中等教育学校が英語試験を実施していますから、このようなスピーキングテストの延長上に都立中高一貫校のスピーキングが開発されるのは、それほど難しくないかもしれません。

さて、英語はこのようにペーパーテストになじまないスピーキングテストも対応できる―つまり新課程の4技能評価に対応できる状況になりつつあります。

中学受験ではすでに記述式は定着している

一方、プログラミングについては、現場の教育が全くといってよいくらい追いついていないため、しばらくは先進的なプログラミング教育実施校から徐々に広がっていくことだろう、と思われます。

しかし、何といっても新課程の目玉は、大学入試で見送られた「記述式」です。またそれは教科横断的なスキルとしてのものですね。

中学入試で記述式は「両極」で実現しています。「両極」とは私立難関上位校であり、一方は、公立一貫校と私立の「適性検査型入試」です。特に適性検査型では教科横断型での記述ですからそこでは新課程が実現(?)しています。

習熟問題から問題解決力を問う試験へと変換なるか

さて、タカの目さんのご質問にはこれで回答になっている、とはいえませんね。

というのも、私立中学、国立中学の主要入試は、一部難関校をのぞいてその多くは習熟問題といわれるかなり応用的な文章題が大半だからです。
そこで聞かれていることは知識・技能であり、それまでの評価観として当然の観点です。しかし、新課程は、そこを転換して思考力・表現力・判断力を新しい観点としました。当然ながらそこで用いられるスキルは違ってきます。

極めて大胆に言うならば、新しい観点に沿うならば知識・技能は基礎がしっかりしていれば、あとは問題ごとに必要な知識・技能は現場調達でよいと考えていることです。

もっとも分かり易くいうなら連載第14回で話題にした東京女子学園の「スマホ持ち込みOK入試」のように、問題解決に必要な応用的な知識・技能は現場でコンピューターから調達する、というテストのあり方です。

目下の中学入試問題の大半であり、主流を占める「習熟問題」がこのタイプに変われるかどうか、が本質的な新課程入試といえるかどうかの一つの分かり易い指標だろうとモリの目は考えます。それと、いわゆる口頭試問が有力な選抜方法として一定の位置を占めるようになるのかどうかだろうと思います。