米中当局者は1月15日、第1段階の経済貿易協定の合意文書に署名。合意が成立しました。

中国から劉鶴副首相が訪米し協議が行われる段階で、事前のスケジュール通りに協議は合意に至る可能性が極めて高まっていました。また、今回の合意文章は96ページと多岐にわたりますが、事前に当局者の発言などから想定される内容だったといえます。

同日の米国株式市場は、午前中に上昇した後、貿易協定の合意に至ったことが報じられると上昇幅を縮小させました。ただ、ほぼ事前の想定どおりの内容で、サプライズはなかったため、主要株価指数はいずれも小幅ながらも上昇して取引を終えました。


第1段階合意はどのように評価できるか

2019年10月初旬から、米国を中心に世界的な株高が続いている1つの要因は、米中通商協議が落ち着く方向に転じ、市場のリスク選好姿勢が強まったことでした。

今回の貿易協定は多岐にわたりますが、まず目立ったのは、中国が米国からの約1,500億ドルの輸入を、今後2、3年にわたり3,500億ドル規模まで拡大させると、合意文書に明示されたことです。

2020年の大統領選挙を控えて、ドナルド・トランプ大統領が主導した強硬な対中政策の果実としてアピールできるため、トランプ政権にとって政治的成果は小さくないと思われます。

実際に、これだけの規模で中国の対米輸入が増えるかどうかは、米中の経済動向に影響される部分もあり、実現可能性は低いでしょう。そもそも、市場メカニズムで決まる各国の貿易動向を政策で歪めることは、本来望ましくない対応です。

ただ、世界第2位の経済大国になった中国が、国営企業の権益や政治的事情などから、公正な経済ルールを遵守していない問題があります。これを是正するためにトランプ政権が米中貿易協議に取り込んでいる、という評価は可能でしょう。

米中緩和シナリオは楽観的である理由

今後、米中貿易協議は第2段合意に向けて交渉がスタートするとみられます。スケジュールやどのような方向に進むかは、正直わかりません。ただ、今回の米中合意をきっかけに、2018~2019年に金融市場の不確実性を高めた“緊張化した米中協議”が大きく緩和方向に転じると予想するのは、やや楽観的と筆者は考えています。

第2段合意の内容は、中国の経済・政治体制に影響する領域に踏み込む可能性があり、これまで米国の要求を受け入れた中国が妥協することは難しいと思われます。また、仮に米中当局が第2段の合意について建設的に協議するとしても、紆余曲折が想定されます。

そして、トランプ政権の対中姿勢は、2019年のような株式市場や経済動向だけではなく、2020年は大統領選挙の情勢が影響するでしょう。具体的には、トランプ大統領が関税引き上げで緊張を高めて株安を招き、株安となった場面では強硬姿勢が和らぐという展開が2019年まで続きましたが、2020年も同様の対応が続くと見込まれます。

経済的・軍事的に中国を封じ込めるトランプ政権の根幹は変わっていないと筆者は考えています。実際に、米国株(S&P500)は2019年11月から最高値更新を続けており、割高感が高まっている中で、トランプ政権が対中交渉の一環として強硬姿勢に転じてもおかしくないでしょう。

<写真:ロイター/アフロ>