はじめに
2020年の市場環境は2019年より厳しくなる
そして、2020年の大統領選挙に関して、トランプ大統領のライバルとなる民主党候補者が誰になるかは、依然として不透明です。仮に、現在有力候補の1人であるジョー・バイデン氏が大統領候補となった場合は、選挙戦を有利に戦うためにトランプ大統領が再び対中関税引き上げに転じるシナリオが想定されます。
実際には、民主党の大統領候補者に誰が選ばれるかを含めて、さまざまなシナリオが考えられます。本格化する大統領選挙、そして米中通商協議、という双方の政治イシューが複雑に絡む中、2020年の株式市場を取り巻く環境は、世界株高となった2019年と比べて、厳しくなると筆者は予想しています。
当面の最大のイベントは、予備選挙において民主党の大統領候補者に誰が選出されるかであり、これは2月になってから本格化します。民主党の大統領候補選定がいつまで続くかは、各候補の得票情勢、意向、資金などが影響するため流動的です。
現状、民主党の大統領候補は、バイデン、バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン、ピート・ブティジェッジの4名に絞られつつある、とみられます。この中でも、サンダース、ウォーレンの両候補は、富裕層への大幅な課税による所得再分配、大企業への規制強化など、を提唱しています。
米国の株式市場では、トランプ大統領が敗北し、同氏と真逆の民主党大統領が誕生し、民主党が上下院で多数派を握る、という展開はテールリスク(まれにしか起こらないはずの想定外の事態)とみなされているでしょう。
ただ、仮にわずかでもこうした政治展開が想定されれば、米国の株式市場は大きく混乱するリスクがあります。2020年前半のどこかのタイミングで、トランプ政権の対中政策姿勢が変わるという事態を含め、これまで上昇が続いた米国の株式市場が調整する場面は十分考えられるとみています。
<文:シニアエコノミスト 村上尚己>