はじめに

希望退職に応じない場合はどうなるのか?

では、「どのくらいの収入を目指せばよいのか?」ですが、その前に、相談者様のケースで、希望退職に応じない場合を想定してみましょう。

相談者様の割増退職金は1500万円。57歳から60歳までの3年間、転職しない場合は年収1000万円を維持できますが、シミュレーション上の転職した場合の想定収入は500万円なので、差し引きゼロです(税・社保を考慮すれば退職金の方が有利)。

また、60歳以降に雇用継続した場合の年収を60歳時(1000万円)の6割を仮定すると600万円。シミュレーション上での転職後の想定収入500万円との差額100万円を、60歳から65歳までの5年間分を考慮すると、希望退職に応じない場合は500万円のプラスです(税・社保、年金への反映は考慮せず)。

ところが、シミュレーション上、87歳時点のマイナスは1500万円なので、転職しない場合の500万円のプラスを加算したとしても、家計は破綻することが予想されます。

相談者様の現在の年収は1000万円なので、手取り年収は、約730万円です。現在の家計状況を見ると、息子さん分の基本生活費や学費を考慮しても、家計は収支トントンぐらいであったと想像できます。学費の負担もなくなり、息子さんの分の家計負担も減るし、割増退職金ももらえるということで、希望退職の検討を始めたのだと思いますが、大前提として、ライフプランと家計の見直しが必要であったと言えるでしょう。

転職の前に3つのパターンでマネープランの作成を

相談者様の場合、割増退職金や家計状況の変化という経済面だけではなく、仕事上のストレスなどの精神面の問題などから転職を検討されています。現在の仕事が厳しいからといって、安易に転職をするのはおすすめできません。

どのような転職の事情があるにせよ、以下の3つのパターンでライフプラン、マネープランを作成し、比較検討することをおすすめします。

・現在の会社に継続して勤める場合
・転職した場合の想定年収
・最悪の想定年収(想定年収の半額など)

転職した場合の想定年収は、転職エージェントにアプローチすることによって、目安の金額を知ることができます。転職エージェントと話をする中で、自身のキャリアの棚卸ができ、自身の人材としての価値を知ることができます。

相談の趣旨として、どのくらいの年収を目指せばよいのかでしたが、ご自身の市場での価値を知って、次の段階として、どのくらいの収入であれば、無理のないライフプラン、マネープランが描けるかの問題になります。

相談者様のように年収1000万円を超えるような高収入の方から、早期・希望退職に関する相談をお受けしていると、ご自身の自己評価が低く、収入をかなり低く見積もっているか、反対に高く見積もり過ぎているかに二分されます。

勤め先を継続、転職した場合の想定収入、そして、最悪の収入ケースで、ライフプランを描いてみて、無理がないかを十分に吟味した上で、早期・希望退職に応じた方が安心です。

また、配偶者の方に転職の話をする際に、夫婦2人でライフプランをつくり、お互いが納得して、そして安心して暮らすことができるという状況で、転職することをおすすめします。

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