はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
新卒で入った中規模の商社で5年が経ち、転職を考え始めています。ゲーム業界でそこそこ有名な会社と大手商社の2社からオファーをいただきました。提示いただいた給与は前者のほうが年間150万円ほど高いです。お金で決めることはないと思いつつ、今後のキャリアを考えるとどちらも一長一短。得られる経験やチャレンジの量はゲーム会社、安定するなら後者という判断を迫られている気がします。正直、どちらも自分には魅力的に映っています。
投資ではよく「ハイリスク・ハイリターン」と言いますが、仕事を決めるときにもこのような発想をしてよいのでしょうか。お金の質問ではないのですが可能でしたら深野さんに答えていただきたく思っています。
(20代後半 独身 男性)
深野: 社会人になって5年も経過すると現在の会社に勤め続けた場合の先行きがほぼ見えてくることでしょう。
私の場合は3年で先行きがほぼ見えてしまったことと仕事に対して情熱が湧き上がらなかったことなどが重なり3年で転職、その後5年9ヶ月勤めたのちに独立して現在に至っています。
チャレンジか安定か
質問者の方は転職に際して、チャレンジか安定かで悩まれているようですが、最終的な判断はどちらの仕事により情熱を傾けてがんばっていきたいかだと思います。
将来的なことを考えれば金銭面の考慮も大切なことですが、質問者の方は現在20代後半、独身であることから、安定というような守りに入るよりは積極的にチャレンジしてもよい気がします。
安定という言葉の響きは耳障りがよいですが、質問者の方がリタイアする年齢まで本当に安定が続くのかどうか疑問があります。
私はすでに50代ですが、20代の頃に安定と思われていた会社が倒産したり、合併したり、身売りしたりという状況をかなりの数見てきました。また会社が傾かないまでも、リストラにあった、関係会社に飛ばされた、果ては健康を害したという例も数限りなく見聞きしてきました。
これらの経験などにより、安定、大企業、寄らば大樹の陰などは永続的なものではなく、幻想に過ぎないのではないかと思っています。
結果として私は、なにがあっても食っていける仕事力を身につけなければならないと考えて今日に至っている次第です。
金銭より自分がやりたいことを
本人の気の持ちようですが、転職を考えているくらいですから金銭面よりも自分が本当にやりたいこと、言い換えればなにがあっても食べていけるような仕事力が付くのかという観点で選んではみてはいかがでしょうか。
この先、何十年も働いていくのですから、食っていける仕事力、言い換えればこの分野では負けないと自負できるような仕事力を身につければ引く手あまたになるでしょうし、不謹慎ですが仮に今回の転職先が将来的に低迷しても再転職も容易になると思われてなりません。
参考になるか定かではありませんが、守りに入るにはまだ若すぎる気がしてなりません。将来に幸があるようがんばってください。仮に失敗しても、やり直しが効く年齢でもあるのです。
なお転職後落ち着くまで、資産運用は安全運転でお願いします。転職というリスクを取ることになるのですから。