はじめに

ステーキチェーンの「いきなり!ステーキ」でJCBカードが使えなくなったということが、1月下旬にネット上で話題になりました。

「いきなり!ステーキ」といえば、運営会社であるペッパーフードサービスの株価が業績悪化の影響で1年間で3分の1になるなど、何かと話題になっている最中。それゆえ、クレジットカード会社からも見放されたかのような書き込みも散見されました。はたして、真実はどうなっているのでしょうか。


クレカをめぐるお金の流れ

本題に入る前に、クレジットカードで買い物や食事をした場合のお金の流れをおさらいしておきましょう。

買い物や食事をして、クレジットカードで支払いをすると、代金はクレジットカード会社からお店に立て替え払いされます。使ってから何日くらいで支払われるかはカード会社によって異なりますが、翌日とか、10日に一度とか、半月に一度など、さまざまなパターンがあります。

後日、クレジットカード会社は立て替えた代金相当額を、カードの所有者から回収します。1回払いなら大体1~2ヵ月後です。この時、クレジットカード会社が立て替え払い手数料を徴収する相手は、カード所有者ではなく、お店。したがって、クレジットカード会社はお店に立て替え払いする際、手数料分を除いた金額を支払います。

クレジットカード会社にとって、カードホルダーは後日お金を回収する相手ですから、当然、与信審査をします。一方、お店はクレジットカード会社がお金を支払う側であって、回収する相手ではないので、審査は不要かというと、そうではありません。

エステや語学教室などのように、先に一括払いをさせて役務提供は分割という場合、店舗側が役務を提供しきらないうちに破綻してしまったら、カード会社はカードホルダーからお金を回収できなくなる場合があります。ですから、ちゃんと最後まで役務提供ができる経営状態なのか、審査するのです。

店舗とクレカ会社は手数料率で綱引き

それでは、本題に入ります。このクレジットカードの手数料は、カード会社によって違うだけでなく、その店の売上高によっても全然違います。利用頻度が高いお店には、カード会社も優遇レートを提示するのです。

加盟店になったばかりの時点ではどうやら一律らしく、VISA、マスターカード、アメリカン・エキスプレスは利用金額の3.24%ですが、JCBやダイナースクラブは3.75%。0.5%ほど高いようです。

しかし、ここから先は交渉次第。店主に交渉力があれば、売上増を理由に手数料率を引き下げさせることができます。才覚のある店主は売り上げが増えれば手数料率の引き下げ交渉を行い、入金サイクルもより短い条件を獲得すべく、日々交渉しています。

というのも、飲食店の利益率はおおむね5%程度。8%も取れていたら、かなり高いほうです。5%しか利益がないのに、その半分以上をカード会社に持っていかれるのでは、たまったものではありません。

筆者がよく通っている和食店は今から約30年前にオープンしているのですが、店主によれば、その当時、代金の支払いにカードを使う人は1割もいなかったそうです。この頃、某カード会社が提示してきた手数料率は実に6%。利益を全部持っていかれるので、このカード会社には加盟しなかったといいます。

その後、VISAが低料率で加盟店の獲得に乗り出し、業界全体の手数料水準も下がって、ようやく3%台になったようです。この店では、カードで支払いをする人は今や7~8割だそうですから、カード会社から好条件を引き出すことは経営上の重要なミッションなのだといいます。

<写真:西村尚己/アフロ>

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