はじめに

押さえるべきは制度の“有無”より“変化”

東証1部企業を対象に毎年1回、9月末時点で取得できる情報を使って、報告書などを通じて「社内倫理に関する苦情の報告に対し、報復または懲罰なしの制度の設定」の「公表を(新たに)始めた」か「それ以外」で分類します。そして、その後1年間の株式の平均収益率を見ました。

表で示した収益率は、2012年以降でさらに平均しています。また同様に、その後3年間の平均収益率も見ています。

【東証1部上場企業で内部告発保護ポリシーに関して公表を始めた企業のその後の平均株式収益率】

公表を始めた それ以外
1年後 19.1% 18.9% 0.3%
3年後 57.8% 55.1% 2.8%

(注)2010年以降、8月末での東証1部企業の内部告発保護ポリシーに関して「公表を始めた」か「それ以外」で分類し、その翌月から1年間と3年間の株式収益率の平均をさらに時系列で直近まで平均。「差」は「公表を始めた」から「それ以外」を引いて算出 (出所)Bloombergのデータを基にニッセイアセットマネジメント作成

分析結果は「公表を始めた企業」のほうが、その1年後、3年後ともに「それ以外」より株価パフォーマンスが上回っています。前年と比べて内部告発保護ポリシーへの意識を高めたという企業の変化が、市場での評価につながったとみられます。

このように、株式投資をするうえでは、企業にとって良い制度の導入であったとしても、すでに広く一般的に行われているものの場合、その“変化”を見ることがとても大切です。

この記事の感想を教えてください。