はじめに

欧州株は真価を問われる局面に

英国では、12月の総選挙で与党・保守党が勝利した結果、1月末でのEU(欧州連合)離脱がついに実現しました。ある種の不透明感の排除が、市場での安心感の高まりにつながっている可能性があります。

しかし、離脱後の英国が直面する課題は決して容易なものではありません。EU側を巻き込んだ政治の不安定化が欧州全体の経済の混乱につながるリスクは、依然としてくすぶっているように思えます。

また、欧州経済の回復のカギを握る外需は、米中通商問題の一服によって、今後回復が見込まれるものの、その一方で進む通貨高が向かい風となる可能性もあります。

1月に欧州株は一時、軒並み最高値圏まで上昇しましたが、さらなる上値を追うためには、やはり市場参加者の期待に即した実績・結果を示していく必要があります。現時点ではまだ、欧州株がグローバル株式市場をリードしていけるだけの条件は整っていないように思えます。

中国は適切な政策対応が焦点

直近で発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しでは、2020年のグローバル経済について、顕著な改善は示されず、引き続き慎重な見方が示されました。米中貿易問題はひとまず第1段階の合意に至ったものの、その後遺症がしばらく残るという考え方が背景にあるようです。

直近の見通しでは、先進国、新興途上国ともに下方修正となっていますが、後者についてはインド経済の下振れの要素が大きいようです。一方、中国の見通しは上方修正されており、そこから読み取れるのは中国経済が最悪期を脱して快方に向かうことへの期待です。

2020年は中国にとって第13次5ヵ年計画の最終年にあたり、いろいろな意味で節目の年となります。中国政府が景気浮揚に力を入れてくる姿が容易に想像でき、中国経済への不安は後退していくことが期待されます。

中国経済の復調は日本も含めた周辺国にも波及し、中国以外の経済・金融市場にポジティブな作用をもたらすと考えられます。これまで株価パフォーマンスで出遅れたエマージング株に、挽回のチャンスが巡ってくる可能性もあるでしょう。

とはいえ、足元では新型肺炎の感染とそれに伴う経済的なダメージが、どこまで広がりを見せるかが非常に気がかりです。震源地の中国はSARSが流行した2002~2003年当時よりも経済規模は大幅に拡大しており、周辺国への影響も無視できません。

中国自身も足元の経済が冷え込むことは必至な情勢で、1~3月期の成長率が4%台に低下するとの見方もあります。中国を含めたエマージング株に対しては、当面は最大限の注意を払いつつ、慎重姿勢を保持することが賢明といえるでしょう。

相対的な割安感が拡大する日経平均

年初の波乱に出鼻をくじかれた日本株ですが、その後の巻き返しによって、日経平均株価は一時2万4,000円台を回復しました。その後は新型肺炎拡大への懸念から売られ、2万3,000円を割り込んだ状態にあります。

日本と中国は地理的に近く、経済的な結び付きも強いため、具体的な影響が明らかになるまでは不安定な相場が続く可能性もあります。本来ならば、2020年度の業績が2ケタ増益を狙えるところまで回復する見込みにありましたが、今後は修正を余儀なくされることもあり得るでしょう。

ただ、そもそも日本株は株価パフォーマンスで他市場に見劣りする状況が続いており、株価調整局面では日本株の割安感が浮かび上がります。日本株(TOPIXベース)の予想PERは14倍を割り込み、18倍台をキープする米国株PERとの格差は4.5ポイント前後に広がっています。

この開きは、2016年11月にトランプ相場が始まって以降の上限に近い水準です。市場が再び正常さを取り戻した後は、米国株よりも相対的に割安な日本株への選好が強まる可能性もあります。

波乱の展開で幕を開けた2020年ですが、海外投資家の中には“日本株を持たざるリスク”を意識する向きも増えそうで、日本株にとってポテンシャルの高い年であるとの位置づけは変わりません。

<文:投資情報部 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和>

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