はじめに
『簿記のしくみが一番やさしくわかる本』の著者である税理士の高下淳子さんは、日本各地で「簿記と経理」に関する講演やセミナー、企業内研修の企画、また講師としてご活躍中です。経理担当者や経営幹部はもとより、営業や新入社員などから、明快でわかりやすい実践的講義に定評があるそうです。
今回は、そんな高下さんに、簿記を学ぶことの大切さや楽しさ、そのためのコツについて話を伺いました。
(文責:日本実業出版社)
簿記を学ぶことは、一生の財産になる
――簿記はどのような人に必要なものなのでしょうか?
高下さん(以下同): 簿記とは、商品の取引など、企業における経済活動の動きを整理・記録するための手段です。そのため「簿記」というと、経理部門の人向けと思われがちなのですが、経理に限らず、簿記を理解し、会社のお金の流れがわかるようになることは社会人の基本スキルといえるのではないでしょうか。
――そもそも簿記は、いつどこで始まったのですか?
1494年にイタリア・ヴェネツィアの修道士ルカ・パチョーリが、『算術、幾何、比および比例全書』(通称スムマ)にヴェネツィア式の「複式簿記」を体系的にまとめたのが、簿記が世に広まったきっかけとされています。
ルカ・パチョーリは「会計の父」とよばれ、天才レオナルド・ダ・ヴィンチも彼から数学を学んだと言われています。
当時のイタリアは胡椒や絹などの東方貿易で栄えていたので、商人は簿記をつかって帳簿をつけ、儲けを管理していたんです。言葉や商習慣、法律は国によって違いがありますが、簿記のルールは世界共通です。今に至る500年以上、変わらないルールで世界中の経済の発展を支えてきたのは、すごいことですよね。
私自身、最初に簿記を勉強したときに、ルールの普遍性や仕組みのすばらしさに感動したことを覚えています。簿記は一生の財産となるスキルなので、「簿記を知らなくても大丈夫」という謳い文句に惑わされないでください(笑)。
――高下さんのセミナーには、どういった方が参加されているのですか?
もちろん経理の方もいらっしゃるのですが、経営者の方が簿記を学び直しにこられたり、営業の方が出席されることもあります。そうしたことからも、いろいろな方が簿記の知識を必要とされていることがわかりますね。
1日完結型のセミナーは演習問題もあり結構スパルタではありますが、やる気をもって参加していただくと、最短距離で精通できるように組み立てています。書籍を読んで興味がわいた方は、ぜひセミナーにもいらしていただきたいです。
簿記を理解するには「5つの箱」がすべてのカギに
――実は、私も簿記の勉強に挑戦したことがあるんですが、難しいし、おもしろくなくて挫折してしまいました……。
大丈夫。そういう人はとっても多いですよ。突然、仕訳をしてと言われても、よくわかんないよ……となっちゃいますよね。
簿記の勉強に挫折してしまった人も、本書の中で紹介している「T/Bメソッド」をつかって決算書作成までの全体像を理解すると、簿記に対するイメージが変わるかもしれません。