はじめに
作業服を一般向けに売り出した「ワークマンプラス」の快進撃で好業績が続く、作業服販売チェーンのワークマン。2月4日に発表した2020年3月期の第3四半期(4~12月期)決算では、売上高に当たる営業総収入は前年同期比41.4%増の715億円、本業の儲けを示す営業利益は同48.7%増の162億円と、9期連続の最高益に向けて突き進んでいます。
そんな中、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大によって、生産面で予想もしなかったリスクが出てきました。どのような影響があるのか、2月7日に開かれた決算説明会を取材しました。
PBの“中国依存度”は約7割
説明会では、小濱英之社長がワークマンプラスの出店状況や、主力のプライベートブランド(PB)の商品動向などを紹介した後、事業リスクの説明に入りました。3年半ほどワークマンの決算会見に出席していますが、事業リスクについての発表は初めてです。
決算説明会では新型コロナウイルスによる事業リスクが発表された
同社のPB商品は、約7割を中国の縫製工場で生産しています。縫製技術の優れた工場を開拓し、年間を通して大量のロットを発注して低価格で販売するのがワークマンの強みで、中国には100社を超える協力工場があります。
新型コロナウイルスが発生した湖北省武漢市にも、Tシャツを生産する工場があります。春夏のシーズン初めに店頭に並ぶ分は、新型コロナウイルスが拡大する前に縫製を終えていて、江蘇省の倉庫へ移したといいます。次の生産分は他の工場に発注済みです。
小濱社長は「春夏商品の入荷はメドが立っているので、影響はないと考えています」と説明。生産を計画する春夏商品のうち半分は、すでに日本のワークマンの店舗や、倉庫に入荷済みといいます。ただ、毎年行っている春のセールは、商品の手配が間に合わない可能性が出てきているため、セールを延期するかどうかを2月20日に最終的に判断します。
「中国を外して製品づくりはできない」
問題は今後、新型コロナウイルスが収束せずに長期化した場合です。旧正月で故郷に帰省した工員が工場に戻れなかったり、工場の稼働を自粛するよう通達が出されるといったケースも想定されます。長期化すると、秋冬向けの商品の生産に影響が出ます。
ワークマンは、ミャンマーやベトナム、カンボジアなどにも縫製工場がありますが、生地は中国で調達・備蓄しています。中国から東南アジアの縫製工場に生地を送り、縫製するとなると、時間と物流コストがかかります。「新型コロナウイルスの影響が少なくなるように、生地調達などのスケジュールを組み直しています」(小濱社長)。
ただ、ワークマンにとって、中国はPBの約7割を生産する重要な国。小濱社長は「中国を外して製品づくりができる状況ではないので、冬の生地手配が遅れるのではと心配しています」と明かします。
この他の事業リスクでは、店舗の運営課題が挙がりました。2019年4~12月のワークマンの店舗の一日平均客数は前年同期比25人増の149人です。客数が増えたことによって、駐車スペースや対応するスタッフが不足しているのです。
また、1,700アイテムを超える商品が店頭に並び、欠品や売り場管理が複雑になっているといいます。今後は、似たような商品を絞り込み、アイテム数を見直します。