はじめに
ビジネスの現場で起きたさまざまな悩み事に対して、リクルートマネジメントソリューションズでコミュニケーションサイエンスチームのリーダーをしている松木知徳さんがお答えするシリーズ。今回は、上司との関係に苦しむ20代女性のお悩みに回答します。
上司と価値観が合いません。企画会議の時、上司が自分の物差しでしか企画の良し悪しの判断をしてくれず、自分の話に耳を傾けてくれないのです。
また、企画書を作っても、かなり細かい部分まで修正指示があり、いくら説明しても結局は上司の思い通りになるまで企画がゆがめられていきます。結果、修正にも時間がかかり、労働時間がどんどん長くなって疲弊します。
そんなに言うなら、自分の思い通りに勝手にやってくれと嫌気が差し、逃げたくなります。どうすれば上司に変わってもらえるのでしょうか。(20代女性)
意外と多い“物差し”の齟齬
松木: 企画作成のノウハウについては、書籍やメディアで取り上げられる機会が多くあります。読者の皆さんも企画検討、資料作成、またはプレゼンテーションについて、方法論を目にしたこともあることでしょう。
相手を想定する、メッセージを明確にする、内容に漏れやダブりがないことなど、企画作成の原則はもちろんあります。しかし、企画作成は人によって物差し(評価基準)が異なることが多いため、自身の大事にする思いやメッセージが上手く伝わらないといった悩みが実は多いのです。
そこで本稿では、上司にも耳を傾け納得してもらえるように、企画を進めるうえで有効なコミュニケーションについて解説します。
ゴールのイメージはなぜ食い違う?
ところで、今回のような相手とのギャップはなぜ生まれるのでしょうか。多くは、コミュニケーションの前提が異なるからです。
誰もが、過去に習得した知識や成功体験などからゴールを想定します。しかし、人によってこれらの前提が異なることで、ゴールイメージに食い違いが発生します。
相談のケースでは、ご自身と上司との間の前提に違いがある可能性が高く、その違いを意識したコミュニケーションをとる必要があります。これが「基準のすり合わせ」です。
ごく簡単に言えば、お互いの物差しが異なることを意識し、イメージを合意しながら進めていく方法です。以下に具体的なステップを確認していきましょう。