プレゼンをはじめとするビジネストークから愛の告白まで、話のなかの「ここぞ」という場面で噛んでしまい、あとで恥ずかしさに悶える人は数多くいます。噛むのを防ぐには滑舌をよくするのが一番ですが、どうすればいいのでしょうか。元テレ朝アナウンサー・渡辺由佳さんの著書から見てみましょう(参考文献:『どんなに緊張してもうまく話せる!』)

話すときに噛んでしまうのは、「緊張からくるストレス」のせいだと思っていませんか? じつは、そうではありません。「舌の筋肉が半分寝ている」ことが原因なのです。そこで話し出す前に、ウォーミングアップをして舌の筋肉を動かしましょう。そうすれば、噛まなくなります。


噛んでしまうのは「緊張」のせいではない

「舌の筋肉が半分寝ている」とは、どのような状態でしょうか? その説明の前に、一度、「東京特許許可局(とうきょうとっきょきょかきょく)」と口に出してみてください。

噛まずに言えましたか? 「東京特許許可局」と話そうとすると、あなたの脳から舌には、「『東京特許許可局』と話せ」という命令が届きます。そのとき舌のコンディションがうまく整っている状態であれば、命令どおりに発音できます。「東京特許許可局」を噛まずに言えたのだとしたら、それまでに話すことなどを通じて十分舌の筋肉を動かしていたからだといえます。

一方、しばらく話していないときの舌の筋肉は、温かく湿った口のなかで「気持ちいい」と、半分寝ている状態だとイメージしてください。そのため脳からいきなり早口言葉のような言いにくい言葉を発音するように命令が届いても、その命令どおりに発音できません。「とうきょうきょっきょ……」などと噛んだのだとしたら、それはあなたの「舌の筋肉が半分寝ている」せいなのです。

たとえるなら、寝ている舌の筋肉に命令を届けることは、ウォーミングアップしていない陸上選手に「いますぐ100メートルを走りなさい」と言っているようなものです。しかし、陸上選手が本番で速く走るためには、ウォーミングアップが必要になります。

それと同じように、しゃべりのプロであるアナウンサーでも、半分寝ている舌の筋肉に「そろそろ本番だから起きて」と知らせるためのウォーミングアップを行ないます。そうしなければ、舌をうまく動かせずに噛んでしまうこともあるからです。

たった1分間の練習で「実力以上の発音」ができる

舌の筋肉を起こすウォーミングアップは、話し出す前に「ラ行」の音を練習するだけです。ここで、「ラレリルレロラロ」を繰り返し30秒間言ってみてください。

舌の動きはどうなりましたか? 舌が上あごに触れては離れるのがわかったのではないでしょうか。

「ラ行」の音は日本語のなかでも、舌の筋肉を最も大きく動かす音です。ラ行の一音一音を発音しようとすると、舌が上アゴに触れ、弾きます。そのように舌の筋肉がよく動くため、ラ行の音を練習すると滑舌がよくなるのです。

プレゼンやスピーチ、面接などの本番5~15分前には、「ラレリルレロラロ」の音を30秒間、さらに「レロレロレロ」という音を30秒間、合計1分間の発音練習をしましょう。そうすれば、たった1分間の練習で自分の舌とは思えないくらい、なめらかに発音できるはずです。

その1分間で実力以上の動きをしてくれるのですから、舌の筋肉はトレーニングする価値のある筋肉なのです。