はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する深野康彦氏がお答えします。
30歳、独身の男です。将来の自身の介護に備えて民間の介護保険に加入しようと考えていますが、加入タイミングとしては払込済みまでの支払総額が増えても、40代、50代と年齢を重ねてからでもいいのでしょうか? あるいは支払総額が安いうちの30代で入るべきか。入って損なものでなければ、安心を買う意味で早めに加入するほうがよいのではないかと悩んでいます。それともインフレに対応できるように積立投資など現金で準備すべきでしょうか?
(30代前半 独身 男性)
深野: 30歳でご自身の介護の心配をされているようですが、ライフプランの時間軸を考慮すれば、いささか早すぎる気がしてなりません。ライフプラン上の資金準備は、近い将来のライフイベントを優先的にすることが基本だからです。
介護不安も含め、老後の準備は早いほうがよいと言われますが、あくまでも資金に余裕があってのことだとご理解ください。
30代、40代、50代など、その年代にしかできないことを我慢して将来に備えることが本当に自分自身にとって最もよいことなのかということを考えてください。
本来の保険の意義
そもそも保険というのは、手持ちの金融資産等で病気、怪我、介護など賄えない不安がある場合に加入を考えるべき保障に過ぎず、また、一定の要件を満たさない限り給付金を受け取ることはできないのです。
私たちは、通常、病気や怪我、あるいは心配されている介護状態にならないように生活しているのですから、過度の保障を確保するのではなく、金融資産とのバランスを考えて保険の加入を考える必要があるのです。
ご質問の介護の話に絞ると、介護認定されれば介護保険を使うことができ、一定までは介護費用の1割負担で済みます。一定費用を超えた場合などは、超えた分が全額自己負担になります。もちろん不慮の事故などリスクはあるものの、今から健康に配慮した生活をしておけば、少なくとも健康に配慮しない方よりも介護保険を利用する確率は下がるはずです。
健康に配慮した生活を過ごせば、余計な医療費を負担しなくて済む。言い換えれば、その分、自分の楽しみに使うことができるということです。なんでも不安を保険で解消するのではなく、生活習慣の改善、しっかり金融資産を作ることで不安面を減少させることができるのであれば、それを今から行っていけばよいのです。
質問者の方に介護が必要となるとしても、一般的には60歳台の半ば以降、30年以上も先のことになると考えられます。介護保険の加入を考えるよりも、積立投資や積立貯金などで金融資産を増やすことを考えたほうがよいでしょう。
同時に健康を維持できるように食生活の改善、運動を行うなど将来に備えることを始めたほうがよいと思われます。
余談ですが、私は50代ですが介護保険、医療保険にも加入していません。なにかあれば金融資産で賄うと割り切っており、また健康を維持するための日常的な努力を惜しまないようにしています。もちろん聖人君子ではありませんので、時に暴飲暴食をしてしまうことがありますが……。