はじめに
原点回帰でシンプル化
そこで一瀬社長が口にしたのが「原点回帰」という言葉です。一瀬社長にとっての原点は、2013年に銀座四丁目に開店した、いきなり!ステーキ1号店。当初はメニューが1種類しかなく、1グラム5円という価格で、300グラム以上の厚切りで食べることを推奨していました。ネットで話題になり、行列が絶えなかったといいます。
しかし、現在はフェアを頻繁に実施しているためメニューが多く、利用者が迷ってしまうだけでなく、従業員の接客の負担が増えてクレームにつながっていました。「一回、思い切ってシンプルな店を作る」と、一瀬社長は説明します。
今後は銀座と錦糸町の2店舗で3月2日から1ヵ月限定で、通常1グラムあたり6.9円のリブロースを1グラム5円で提供します。これで利用者が求める方向性を検証して、メニューや価格などを見直していく予定です。
実際、価格については「高い」という声が寄せられているようで、「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)に出演した際、小池栄子さんに同様の質問されて「つい机を叩いてしまった」と、一瀬社長は語ります。
グラム当たりの価格で他店と比較すると割安だとしても、「お客様に説明しても納得していただけない」ことから、ショッピングセンター店などの一部では、150グラム税別900円と低価格な「テンダーカットステーキ」の提供を始めています。
ペッパーランチを強化へ
2020年度の計画では、いきなり!ステーキの売上高は496億2,700万円(前期比13.1%減)、営業利益が16億5,300万円(同14.1%減)。一方、ペッパーランチ事業の売上高は99億5,700万円(同13.3%増)、営業利益17億0,700万円(39.3%増)となっています。
決算説明会でペッパーランチについての言及はあまり多くありませんでしたが、いきなり!ステーキを営業利益の額で上回る計画を組んでいます。ペッパーランチは1994年に1号店がオープン。2019年末の店舗数は525店に上ります。
既存のいきなり!ステーキを自社競合を回避するため、ペッパーランチへの業態転換を5店舗予定します。内食需要の高まりに合わせ、デリバリーやテイクアウトを強化していくほか、ヒレやリブロースなどの高単価商品の導入で既存店を強化する方針です。
ステーキ業態のチェーン店が増加して競争が激化する中、原点回帰を宣言した、いきなり!ステーキ。はたして安定的な売り上げを確保することができるでしょうか。