はじめに
危険な評価の落とし穴
米国のある地域の市議会が警察の有効性を示す指標としてパトカーの走行距離を用いた結果、ある地域の警官が勤務時間中ずっと高速道路を走っていたという逸話があります(*1)。この行為は警察に対する「評価」を一時的に上げることにはつながっても、本来期待される役割を果たしているわけではなく、次第に周囲の評判を落とすことになるでしょう。
最近では人事評価に360度の調査や顧客評価を取り入れる企業が増えてきました。これは目標に対する業績評価だけでなく、下図のように自身の仕事に関係する多くのステークホルダーからのフィードバックを得ることによって、評価を適正にするだけではなく、個々人の改善の機会を得るためでもあります(*2)。
相談者の質問に対して答えるとすれば、「評価も評判も両方大事」と言わざるを得ません。ただし、現在地が図1のABCDのいずれかにあるかを認識することが必要です。もし、Cの位置にいるのであれば、周囲の評判を気にするよりも、まず成果にこだわってやり抜くことが必要になるケースもあります。
今回の相談ケースでは、上司がある程度、相談者の業績を評価しているうえで、評判の不足についてアドバイスをしています。これはBの位置にいるという示唆かもしれません。そうであれば、仕事のプロセスについて周囲の理解が得られているかを見直すタイミングととらえるべきかもしれません。
評判を獲得するには?
では、周囲の評判を上げるために具体的にどのような働きかけをしたら良いのでしょうか。3つのヒントを、ことわざとともにご紹介します。
ヒント1:功を急ぐべからず
目標達成や成果にこだわることはとても重要です。しかし、目先の評価を気にし過ぎるあまり、会社のルールや必要なプロセスが抜け落ちないように注意しましょう。たとえば、社内報告やミーティングの時間を守り、自分の都合で顧客や協働者に無理な要求をしないように意識することで、周囲の信頼を得られます。
ヒント2:人を見て法を説け
相手の立場や性格を見て接するべきだという意味です。いつでも自分の言いたいことを自分のレベルで話すのではなく、相手の知識・経験や立場を踏まえて会話をしましょう。たとえば、他部署に説明する際には前提となる経緯を伝え、専門用語を丁寧に説明することで、周囲の納得を得られるようになります。
ヒント3:情けは人のためならず
親切が巡りめぐって自分に恩恵として返ってくるという意味です。自身の成果だけでなく、周囲の成果をサポートしましょう。たとえば、企画書作成で困っている後輩がいたら、アドバイスをし、自分が苦労して作ったノウハウも出し惜しみしないで共有することで、周囲からの尊敬を得られるようになります。
このように、評判を得る方法は必ずしも難易度の高いタスクを行うことではありません。ちょっとした日常の積み重ねがあなたのブランドを形成していきます。
組織で仕事をしていくには、必ず周囲の協力が必要になります。特に、役職が上がり、部門間の連携や協働者の数が増加するに従い、評判の良し悪しが自分のスムーズな業務遂行に影響するようになります。目の前の評価ばかりに目を向けていたと思う方は、ぜひ評判を意識した仕事の進め方をおススメします。