はじめに
自分の「いいな」を大切に
では、どんな商品を買えばよいのでしょうか。
「やはり、自分が興味あるジャンルや、もともと詳しい商品がよいですね。
好きなものについての情報は自然と目に入ってきますから、わざわざ勉強したり、人に教えてもらったりしなくても、なにに価値があって、なにが売れるのかが感覚的にわかりやすい。
まずは自分が“いいな”と思う感性を大切にすればよいと思います」
腕時計や家具、車など、確かに好きなものについてはマニアックなほど詳しくなってしまうもの。
とはいえ、自分のセンスが世間の需要と一致するのかどうか不安に感じる人もいると思います。
「家具であれば、お金持ちの家にあるようなものは、価値が下がらず高く売れる可能性が高い。それだけ需要があるということです。
また初心者の方が中古で高級品を買う場合は、過去の取引価格などロジカルな数字から見てみるのもよいと思います。
そして実際に何度か売買してみると、“リターンとして返ってくる”という概念が経験として理解でき、売れるものがわかるようになってくる。腕時計売買の場合は、3本くらい買ってみて、やっと感覚がつかめるところがあります。
ただ、『自分はこれが好き』という気持ちも数字と同じくらい大切にしたほうがいいです。思ったように売れなくても、自分が本当に好きで買ったのだとしたら、その商品を使った時間を財産だと思うことができる。
『他人が“いい”と言うから買ったけど大損しました』では悔いが残ってしまいます」
さらに、同じ感性を持った人の間での売買が行いやすくなったのが、現代のネット社会。
「実店舗で商品を買うこともありますが、見本市的な意味ではネットが圧勝です。
ネットショップやオークションサイトなどで、現品を見ないで買うことは不安かもしれませんが、経験を積むと店舗情報や写真から判断できるようになります。
また、時計の場合、ネットショップで売っているのは個人ではなく業者の可能性が高いため、品質の低いものは1~2割と非常に少ないです」
「中古」はすでに価値が保障されている
斎藤さんは、腕時計のような高価なものを買う際に、もっともおすすめなのが「中古」だと言います。
「昔は中古品は邪道だと思っていました。その後、売るという概念もなかったです。
でも例えば、『本当はロレックスの時計がほしいけれど、妥協してオメガにする』という人は多いですよね。
私が中学生のときに買ったオメガは新品で13万円、でもその後、売ったら5万円にしかならなかった。そして、本当にほしかったロレックスは当時中古で25万円だったのですが、今は60万円以上になっています。
中古は邪道だという思い込みを捨てて、自分のほしいという気持ちに素直になっていればよかったのに……と悔やみますよね」
さらに、中古品のよいところは、すでに価値が保障されている点だと斎藤さんは指摘します。
「中古として出回っている商品には、どれくらいなら購入してもらえるのかという適正な価格がついています。評価されているものは高価に、あまり評価されていないものはそれなりにと、市場を踏まえた価格がついているわけです。
中古で買うと、売る時の価格も想定でき、売れない商品を高値で買う心配がないのです」
「今は中古がおもしろいので、買わない理由がない」と力説してくれた斎藤さん。腕時計や家具だけでなく、カバンや靴などのファッションアイテムも中古であれば、新品よりも安く手に入ります。
フリマアプリの台頭によって中古品の個人間売買もより一層盛んになっている昨今。「安物買いの銭失い」体質から抜け出るために、憧れのアイテムを中古で手に入れてみるのはいかがでしょうか。
■斉藤由貴生氏 プロフィール
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。お金を使わず贅沢することのプロフェッショナルとして「腕時計投資」を推奨している。
『もう新品は買うな!』 斉藤由貴生 著
他人に売れないようなモノを新品で買うのはもうやめよう! これからの時代の消費は「いくら戻ってくるか」を考えて買うべきなのだ。そして、それには「中古」がぴったりである。消費に踊らされないモノの買い方を、借金7,000万円を返済した気鋭の腕時計投資家が提唱する。