はじめに

「感染拡大のピーク越えが近い」との連想が働いた?

「実際の件数はもっと大きくなったはず」と米国の一部メディアは指摘しています。「コンピュータシステムに過大な負荷がかかり、申請のできないケースが多かった」(同メディア)。

ところが、26日の米国の株式市場では、「意外」な動きがありました。新規失業保険の申請件数が発表された後、株価が急騰したのです。ニューヨーク市場のダウ平均は前日比1,351ドル62セント高の2万2,552ドル17セントと大幅に上昇して取引を終えました。

値上がりの理由をめぐる市場関係者の分析はさまざまです。「悪化はすでに相当程度、株価に織り込まれていた」と話すのは、ある日系証券の担当者。米国の一部金融機関の事前予想は400万件だったため、「思ったほど悪くなかった」との思惑から買い物が先行した、とみる向きもあるようです。

一方、SMBC信託銀行プレスティアの山口真弘・投資調査部長の見立ては異なります。「“これほど申請件数が膨らんだのは、企業がヒトの移動を抑えるなどコロナウイルス感染拡大の防止策に本腰を入れている証し”と受け止められた可能性がある」(同氏)。

ニューヨーク州などがレストランやバーの店内での飲食を禁止。映画館なども閉鎖に追い込まれました。こうした状況に対応し、多くの企業が従業員のレイオフ(一時帰休)や解雇に踏み切りました。「企業による取り組みが徹底されれば、感染拡大もピークを越えるとの連想が働いたのではないか」(同氏)。

むろん、今後も拡大に歯止めがかからないようだと、さらに雇用調整が進むシナリオも否定できません。27日の米国株式は4日ぶりに大幅反落。不透明感は残ったままです。

雇用が悪化すれば、米国の国内総生産(GDP)全体の7割を占める個人消費にも影響が及ぶのは必至です。「米国の景気後退への懸念から円に対してドル安が進みそう」。ある為替相場の専門家はこう予測しています。

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