はじめに
友人に声をかけたが
入会後、高校や大学の友人10数人に声を掛けたという豊田さん。誰からも「50万円も無いよ」「そんなにかかるんだったらやりたくない」ときっぱり断られ、紹介料を得ることはありませんでした。
肝心の「投資」も鳴かず飛ばず。一度、運営側のコミュニティーで勧められて「バイナリーオプション(為替レートを高いか低いか予測する投資)」に挑戦し、10万円ほどもうかったことがありましたが、それっきり。消費者金融から借金してまで運営側に支払った計約60万円の“授業料”の大半は、増えるどころか返ってはきませんでした。
豊田さん自身、18年初めごろまではセミナーにも通っていましたがその後疎遠になり、運営側からの連絡にもそのうち応じなくなって「今では足を洗った」そうです。
今は激しく後悔しているのかと思いきや、豊田さんは誘ってきた先輩や運営団体を、ほとんど恨んでいない様子なのです。今でも「やってみていいことと悪いことの半々だった」と感じているとか。
「自分が(仕組みを)分かっていないサービスを(他の学生に)売ろうとするのは無責任だった」(豊田さん)。一方で、「大金を払ったことで、自分の知らない領域に踏み込め、ビジネスというものを勉強できた。商材で稼ぐことができず50万円損はしたが、何か生み出せるものがあった。僕は悲観的になっていない」と強調します。
学生を標的にする情報商材ビジネス
情報商材にはまる前から、会社員になるよりも「内容は見当もつかないが、とにかく何か起業してみたい」と願っていた豊田さん。「自分は他の人と価値観がずれている」と話す彼ですが、実際は“ビジネス”“ベンチャー”といったキラキラした世界に無邪気にあこがれる、典型的な「意識高い系」の若者ように見えました。そういう学生が、情報商材ビジネスの餌食になっている構図が見えてきます。
大した収入や貯蓄を持たぬ学生を狙い、彼らのビジネスへの憧れと無知、何より将来への漠然とした不安に付け込む情報商材ビジネス。実際に多くの大学が入学生向けに注意喚起を呼び掛けています。被害拡大防止のため、社会からの厳しい指弾が求められています。