はじめに

第二次大戦時から変わらない政府対応

マクロン大統領は、今回の新型コロナウイルスとの戦いを「戦争状態」と表現しました。またイギリスでは、93歳になるエリザベス女王が3月5日のテレビスピーチで、第二次世界大戦の経験に触れました。

フランスでも同じ気持ちを持つ高齢者はいます。今年92歳になるワイン評論家のミッシェル・ドバーズさん(男性)です。ドバーズさんは、今回の国を挙げての外出制限の日々を「まるで刑務所のようだ」と述べます。

「1939年に始まった第二次世界大戦を思い出します。あの時とまったく同じものを見る思いです。当時の問題は、必要な場所に必要な武器を送ることができなかったこと。現在はそれが検査キットや薬に変わりました。1939年から年月は経ても、フランスには何の進歩もなく、別の戦場があるだけです」(ドバーズさん)

3月16日夜にマクロン大統領がテレビ演説をして、翌17日からフランス政府は全国で外出制限を敷きました。制限がかかる前、いつ終わるか分からない外出制限(当初は「少なくとも2週間」と発表され、現在は4月15日まで延長)を、狭いパリの家よりは田舎の別荘や故郷で過ごそうと、多くのパリ市民がパリを抜け出しました。

このことをドバーズさんは「1940年にパリの住人や北国の人々がドイツ軍を逃れて南下した、エグゾードと全く同じ」とも言います。

「今パリのどこにパリジャンがいるというんですか!? みんな別の場所に移動してしまいましたよ。それができない人たちがパリに残っているのです」(ドバーズさん)

外出制限から3週間、この間にフランス全土で580万人が取り締りを受け、35万9千人に罰金が課せられています。決して少ない数ではありません。

フランス政府が「戦争状態」という表現をあえて使う裏には、そうまでしてでも国民の意識を引き締めなくてならないという政府の切実さがあります。それは、この伝染病がもたらしている困難そのものなのです。

Keiko Sumino-Leblanc / 加藤亨延

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