はじめに

100年前にも起こった医療崩壊

100年前のスペイン風邪は、1918~1920年に世界各国で極めて多くの死者を出したインフルエンザによるパンデミックの俗称です。1918年1月から1920年12月までに世界中で5億人が感染したとされ、これは当時の世界人口の4分の1程度に相当します。

死者数は2,000万人から4,000万人との推計が多く、1億人に達した可能性も指摘されるなど人類史上最悪の感染症の1つでした。(患者数は回を追うごとに減少したようです)

第1波は1918年3月にアメリカのデトロイトなどで最初に流行したと言われ、アメリカ軍のヨーロッパ進軍と共に大西洋を渡り、当時中立国のスペインを中心に5月から6月にヨーロッパで流行。

第2波は1918年秋にほぼ世界中で同時に起こり、病原性がさらに強まり重篤な合併症を起こし死者が急増。

第3波は1919年春から秋にかけて、第2波と同じく世界で流行しました。さらに、最初に医師・看護師の感染者が多く医療体制が崩壊したため、感染被害が拡大しました。

今回世界中で起きている医療崩壊やデマによる混乱は、100年前の米国や日本でもほとんどの人がマスクをしている点、手洗いやうがいの励行など本当によく似ていると言えます。

しかし、電子顕微鏡のなかった時代と異なり、現在はワクチンや新薬の開発など医学の進歩は目覚ましいため、早期の終息が期待されるところです。

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減税と金融政策の有効性

1929年恐慌後のNYダウは図の通り、初期対応の誤りから傷口が広がり1932年7月まで下落しました。その後は、ルーズベルト政権のニューディール政策、第二次世界大戦、朝鮮戦争などを経て、アイゼンハワー大統領に減税と金融緩和によって24年ぶりに1929年の高値を上回ることに成功したわけです。

減税と思い切った金融緩和は株高に効果が大きいという実例と言えそうです。日米欧の政府と中央銀行は足並みをそろえてこれを実行することで、危機を脱することが可能となるのではないでしょうか。

<文:投資情報部 高橋幸洋>

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