はじめに
タイで暮らす7万人以上の日本人はいま、タイ人とともにコロナウイルスと戦っています。緊急事態宣言の出た日本よりもずっと厳しい外出・営業制限のロックダウンの中、不自由な生活を送っていますが、その暮らしは立場によってもずいぶん異なります。
現地採用はそのうち、どこを目指すべきなのか。コロナの影響を鑑みつつ、タイ現地採用のステップアップを考えます。
10万バーツを目指して転職していく
タイで現地採用として働いている人も、その多くはテレワークや自宅待機となっています。いまや夜間外出禁止令も出され、あの賑やかなバンコクはすっかり静まり返り、陽気であるはずのタイ人もマスク姿で暗く沈んでいます。
現地採用者の中にはそろそろ、解雇になったり、給料の一部カットとなる人が出始めていると聞きます。とくに飲食、観光といった業界はかなり厳しい状況でしょう。またタイの基幹産業である製造業でも、「ロックダウンの影響で、タイに進出している自動車関連など大手メーカーが生産の一時停止や減産に踏み切っている。こうした企業は傘下に多数のサプライヤーを抱えており、雇用がどうなるのか。立場の弱い外国人現地採用はリストラの対象になるかもしれない」(部材関連の営業マン)という声もあります。
一方で、企業によっては、社員の安全を第一にして出社禁止の完全テレワーク、給料も100%補償というところもあるそうです。
タイの現地採用たちは勤めている会社の層が実に幅広いのです。そしてタイは流動性豊かな社会。タイ人たちはいとも簡単に会社を辞めて、より良い待遇のところへと移っていきます(居心地の良さを感じて何十年と勤めるタイ人もいますが)。そんな空気は現地採用の日本人にも伝わっており、転職はきわめて日常的となっています。タイ生活で最初に勤めた会社でそのままずっと働く人というのは、むしろ少数でしょう。
タイの法律で定められた日本人の最低給与は月5万バーツ(約16万5,000円、ただし一部企業は除く)。この値段に甘んじることなく、タイ語や英語能力を上げ、スキルを磨いて、ステップアップしていく。それが現地採用のひとつの姿です。いまでは、月10万バーツ(約33万円)、あるいはそれ以上の給料を得ている人も珍しくはありません。とくに日系工業団地で働く製造業なら、10万バーツ超の求人はいくつも見つかります。
現地採用を生活を支えるのは、タイのこうしたローカルな場所だ
33万円という額は、日本では庶民層でしょう。しかしタイであれば、高給取りといえます。日本よりもずっと余裕のある生活が可能です。現地採用としては、この額はひとつの目標かもしれません。
10年ほど前までは、現地採用といえば使い捨てのアルバイト的人材だという認識が強かったものです。しかしタイに進出してくる日系企業も、現地をよく知り、タイ人の文化と言葉を理解して現場を回せていけるスタッフを重要視するようになってきました。その姿勢が待遇にも現れてきています。