はじめに

駐在員としての採用も増えてきた

そして脱・現地採用を目指す人たちもいます。実績が認められて、日本の本社採用に切り替わるという人もいるのです。こうなると給料も社会保険も日本ベース、家賃補助が出たり、クルマを支給されたりもします。つまり、駐在員と同等です。新卒入社より給与の伸びはやや落ちるかもしれませんが、それでも駐在員になれるのは人生設計を考える上で非常に大きいと言えるでしょう。

そんな駐在員たちもやはりコロナの影響を受けています。例年この時期は決算のあとに本帰国し、新任の駐在員に「バトンタッチ」する企業も多いのですが、いまはタイも日本も入国制限が敷かれています。航空便は激減し、入国後は2週間の隔離。タイ入国に際してはコロナ陰性証明書が必要となっており、PCR検査の制限をしている日本ではなかなか入手が難しいのです。このため、いま赴任している駐在員がそのまま居残り、任期を一時的に延ばす企業が増加しています。

また、すでに新規赴任のためにタイに入国しているものの、この混乱の中でイミグレーションもてんてこ舞いとなっており、ビザや労働許可証の取得に時間がかかっています。赴任してきた駐在員、試験に合格して就職を決めた現地採用者も、滞在資格が取れないケースが出ているようです。

さらに滞在期限が迫ってきた人はビザと労働許可証の更新も必要ですが、やはりイミグレーションは大混雑が続いています。タイ政府はこれを受けて4月30日まで全種類のビザを自動延長させる特別措置を取りましたが、その後はまた滞在期限とにらめっこする日々になりそうです。駐在員でも現地採用でも、海外暮らしとなれば、ビザ手続きと国際情勢にはいつも振り回されるものです。

タイ人家族の中に入っていく

現地採用のステップアップのひとつは、起業でしょう。現地採用として働いた経験と人脈を生かして、異国で会社をつくってしまう。これがたいへんな偉業のように思えて、実はそうでもなく、けっこう皆さんぽんぽんと立ち上げる。そのための準備を手伝う日系コンサル会社もたくさんあります。

タイタイ人ファミリーが大好きなステージつき大型フードコート&ビアホール

一般的には、外国人ひとり(起業した本人も含めて)あたり200万バーツ(約660万円)の資本金と、4人のタイ人を雇用することが条件となっています。飲食、旅行関係、貿易などを中心に現地で会社を立ち上げる日本人は増えていますが、もちろんその後に成功するかどうかは本人次第でしょう。「在タイ日本人社会7万人の狭いマーケットではなく、6,700万人のタイ人マーケットに打って出る」ことが大切だとは、よく言われています。

もうひとつ、現地採用の「アガリ」の形は、タイ人と結婚して、現地の家族に溶け込んでいくことでしょう。タイ人は、家族同士のつながりが日本人よりもずっと強いように見えます。その中に入り込み、互いに労わりあって親密な家族、親族つきあいを重ねていれば、仮にコロナで失業しても助けてくれるはずです。

タイ人女性と職場結婚したある現地採用者は、こんなことを話しています。

「奥さんは『もしコロナで経済恐慌になって、お金がなくなっても、カオニャオ(もち米)と塩さえあればなんとかなる。田舎に帰ればそれだけはたくさんあるから』と言っていて、心強い」。

現地の自然に根差した食と、血縁。こればかりは駐在員がどれほどお金を持っていようと、かなわない部分です。こうした信頼関係があれば、老後も施設に預けられることなく、きっと介護してくれるでしょう。

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