はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。
妻と資産運用について揉めています。投資のためにアパートを購入して5年。もう一棟アパートを購入したいと考えていますが、妻は「教育資金が必要になるし、余裕があるなら繰上げ返済」と反対しています。子供はほしいと思っていますが、まだ出産の予定はありません。自宅に関しては一生賃貸で合意ができています。今後についてアドバイスお願いします。現在の資産状況は以下の通りです。
【私】
所得500万円(給与420万円 不動産80万円)
[資産]
円預金1,100万円 ポンド預金2,000万円 日本株500万円 外国株2,000万円
[負債ローン]
アパートローン1棟3,200万 利率1.9%(残20年)物件は80万/年程度の黒字
【妻】
所得350万円
[資産]
円預金150万 金15万
[負債ローン]
奨学金100万 無利子(残8年)
(30代前半 既婚・子供なし 男性)
内藤: 資産運用の最初の一歩は現状認識。次に目標の設定になります。
ご質問者の方の場合、現状の資産に関しては明確に把握しておられるようですが、目標設定については曖昧な点があり、ご家族との意見のすり合わせも十分ではないようです。
意見の違いを無理に埋めようとするより、まずは家族で将来の夢や目標についてお話されることをおすすめいたします。
資産運用をどのように進めるかではなく、家族の将来のライフプランから話を進めていくのです。
その上で、夢や目標を実現するために必要な金額を考えていきましょう。「いつまでにいくら」という数値目標が見えてくれば、今度はその金額を達成するために最適な資産運用の方法を考えることができます。
建設的な議論をするためには
次に資産運用の具体的な方法ですが、専門家も交えて相談するとよいでしょう。客観的な立場でコメントをくれる人を交えて話し合いを進めることによって感情的な対立を防ぎ、建設的な議論ができるようになります。
株、債券、投資信託といった金融商品と不動産のような実物資産、それぞれを組み合わせた場合のバランスについて慎重に判断していきましょう。
ただし、金融資産に加え、不動産投資に関しても専門的な知識を持っている資産運用の専門家は、ほとんどいません。誰に相談するのかについては慎重な判断が必要です。
また不動産投資にともなう節税効果についても検証が必要です。こちらは税理士に相談して、タックスメリットがどの程度あるのかも事前に調べておきましょう。
資産運用はあくまでも「手段」
資産については、2人の分をバラバラに見ていくのではなく、合算させた上で全体の配分を検討すべきです。合算してベストな配分を考えて、それぞれの運用方法に落とし込んでいきます。
ちなみに、ご本人の資産構成の概要を見ると、内外の株式に2,500万円、またポンドの外貨預金に2,000万円と偏りが見られるようです。借金をして不動産でリスクを取ることを考えれば、金融資産に関しても分散を意識してリスクコントロールを検討すべきと思います。
いずれにしても、資産運用は目的ではなく、人生を豊かにするための「手段」に過ぎません。ご家族でよく話し合って、納得できるプランを考えてみてください。