はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

4年前、東京都目黒区に中古マンションを購入しました。その時点では妻と2人で2DKと余裕があったのですが、昨年子供が産まれ手狭になってきています。来年にはもう1人産まれる予定なので、今後、引っ越しを考えなければと思っています。


今のマンションを賃貸に出して少し離れた場所で賃貸を探すか。マンションは売却し、新しくローンを組んでマンションを買い換えるか。どちらにすべきか悩んでいます。上の子供が小学校に入る前にはどうにかしたいと思っています。ちなみにローンは後29年です。売却と賃貸の考え方について、アドバイスをお願いします。
(30代前半 既婚・子供1人 男性)


内藤: ご質問ありがとうございます。ご相談者の方が、今後の方針を決定する際に考慮すべき点が3つあると思います。

考えたい3つのポイント

1つ目は、都内のマンション価格の動きです。一般に今後も価格が上昇する可能性があるのであれば所有したほうが有利です。逆に価格が下落するならば売却したほうが有利になります。新しく住むマンションも賃貸のほうがよいでしょう。

また価格が横ばいであれば、家賃を払って賃貸に住むよりも保有した方が有利ですし、物件を貸し出せば家賃収入を手に入れることができるので今のマンションは所有したほうがよい、ということになります。

2つ目は、賃貸利回りの計算です。今所有している物件を賃貸に出した場合、どれくらいの利回りで貸せるのか。また空室リスクがどのくらいあるのかを、周辺の環境を調べたり、不動産賃貸会社に相談したりして、チェックしてみましょう。

賃貸利回りによっては保有物件を売却して投資用のマンションを購入することも選択肢として考えられます。

例えば都心の中古ワンルームマンションの利回りは、管理費などの諸経費を差し引いても4%半ばくらいの水準です。空室リスクも23区内ではほとんどありません。このような投資物件と自分の住んでいる物件を比較してみると、どちらが有利かが判断できます。

3つ目は、売買にかかるコストです。売却したり、買い替えたりすると、売買手数料や税金などコストがかかります。

損得にあまり差がないのであれば、あえて売買する必要はありません。またローン金利についても比較してみる必要があります。一般的に投資用マンションの提携ローンは住宅ローンよりも金利が高くなる傾向があります。

取るべき選択肢は?

上記3点の考慮をした上で、これから取り得る選択肢として以下の4つをご紹介します。

(1)保有物件を貸出し、賃貸に転居
(2)保有物件を売却し、新たにマンションを購入
(3)保有物件を売却し、賃貸に転居して、投資用ワンルームマンションに買い替え
(4)保有物件を売却し、賃貸に転居

ご相談者の方が今後、不動産が値下がりすると思うのであれば選択肢(4)が合理的です。また賃貸に住む際の家賃よりも、投資物件の利回りが高ければ、(3)が選択肢になります。

現状の物件でも高い利回りが得られるなら、(1)を選ぶのが良いでしょう。売却をしてマンションを購入する選択肢(2)は、経済合理性からは割に合わない可能性が高いですが、自宅を所有するという満足度は一番高いかもしれません。

一般にファミリータイプのマンションは賃貸利回りが低く、空室リスクが高くなる傾向があります。テナントの入れ替わりはワンルームほど激しくありませんが、需要の割に物件の供給が多いことが、その背景にあると思います。

長期的な視点で考えれば投資用の物件を購入し、賃貸収入をローン返済に回しながら資産形成していくのがよいと思います。

いずれにしても不動産は取引コストが高い資産です。売買を行う前に慎重に検討をしてから、悔いのない判断をすることをおすすめします。

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