はじめに

教え子からLINEでSOS

新型コロナウィルスの問題が発生する前から、ネグレクト、虐待があったり、貧困家庭であったりという家庭。食べ盛りの子どもが、きょうだい三人でひとつのパンをわけあって食べ、それだけが一日の食事である子どもたちもいます。給食だけが命綱である子どもたちは現実に存在するのです。

中部地方のある小学校の教員は、教え子のなかには、昨年度以前、過去に学校から通告をし、児童相談所で一時保護をしたことのある子どももいるといいます。

休校中、そんな子どもたちから「先生、たすけて」「お父さんからなぐられた」「お母さんからけられた」「いたい」「(コロナ禍の影響で失業や休業に追い込まれ在宅している)お父さんがお母さんをなぐっている」「こわいよ」「お母さんをたすけたい」「もうむりだ」——などと、LINEで送られてくることも決して少なくありません。

彼らにとってSOSを出せる相手、助けを求められる大人が、一時保護へと繋げてくれたその先生しかいないのでしょう。

二転三転する新型コロナ対策への対応会議中で、LINEを確認できないときもあります。

会議後、LINEのメッセージに気付き、すぐに電話をかけても出ない。家へと急いでも、室内は電気がついており明らかに在宅している様子であるにもかかわらず、誰も出てこない。保護者が顔を出すものの、体よく追い返されることもあると唇を噛みます。

あとになって、実は先生へ助けを求めたLINEを、親から見られてしまい怒鳴り散らされ、物を投げつけられたり突き飛ばされたりと暴力を受けた挙句、スマホを取り上げられていたと知るのです。

子どもたちの声をすくい上げることが大人たちの役目

北海道のある小学校の教員は「ひとり親家庭で、お母さんが朝から子どもを家に置いて出かけたまま、夜22時になっても23時になっても、深夜2時を過ぎても帰ってこない。家のなかに食べものはない。お金もない。外出中のお母さんと連絡すら取れず、どこにいるのか、なにをしているのか、いつ帰ってくるのかわからない。お腹を空かせ、夜も更け、たったひとりきり。恐怖やさみしさ、心細さ。お母さんはもう帰ってこないのではないか、自分は見捨てられたのではないかという絶望感。空腹と、言い得ぬほどのつらい気持ち、苦痛を耐えながら、母親の帰りを待ちわびていると、明け方ようやく帰ってくる。やっと帰ってきてくれた! と駆け寄るも、母親は子どもを一瞥することもなく、子どものことを気にかける様子も、ひと言すらもなく、そのまま布団に入って寝てしまう——そんな状況にある子どももいます」と沈痛な面持ちで語ります。

人と人との対面による交流をはかることの難しい状況下。経済不安、健康不安をはじめ、私たちの生活ストレスは、まるで先の見通しを持てないまま増すばかりです。

生きることを諦めそうになる。生きること、空腹を満たすことすら困難である。そんな瀬戸際にある人々も、決して少なくはありません。

子どもたちをどう守るか。今日を、いまを、どう生きていくか。声を上げることのかなわない子どもたち。泣くことすらできない子どもたちの現実、声なき声を取りあげました。コロナ禍で社会から発見されず、救いの手も届かない。そんな子どもたちは、水面下に存在しているのです。

私たち、社会を構成するひとりひとりへ、真摯に向き合うべき課題が突きつけられ、それぞれの責務が問われています。

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