はじめに
保険供託金といって安心させる
国民生活センターによると、法律事務所名で下記のような和解証明書が送られてきたそうです。一部、簡略化してご紹介します。
この度、貴殿が申し込みされた株式会社〇〇〇〇が運営するプロジェクトの参加料金未払い訴訟並びに債権回収業務について、合意の上、貴殿及び当事務所並びに〇〇〇〇債権回収株式会社の三者間で和解手続が執り行われることを此処に証明する。
(中略)
和解手続完了後は、運営事業者が行うプロジェクトの会員登録解除並びに個人情報保護法に基づき個人情報の抹消を行うと同時に、支払が完了された証として完済証明を発行するものとする。損害賠償額:3,495,600 円 保険供託金額:349,560 円
などと書かれていたそうです。
実は、この保険供託金というのがミソなのです。これにより、詐欺業者は「保険の適用により最終的にあなたにお金が戻ってくるので、あなたの実質負担はない」と言います。
その点も、和解書に記載されています。
「本手続は運営事業者が加入する事業保険を適用するものとし、貴殿が納める供託金の確認後、事業保険による弁済手続が為され、供託金は貴殿に全額返還されるものとする。なお、この際の保険料の精算は貴殿が行う必要はない。」
最近の架空請求詐欺に共通するのが、「後でお金を返しますから」と話して、お金を払う側を安心させてきます。
しかしながら、国民生活センターが調べたところ、債権回収業者もプロジェクト運営事業者も請求はしておらず、保険会社でも今回のような保険は扱っていなかったそうです。
お金を払う前に公的機関に相談を
ここから見えてくるのは、詐欺師たちの逆転の発想です。
これまでの架空請求はアトランダムにハガキやメールを送り付けてから電話を待つ形でしたが、今回は最初に詐欺のターゲットになりうるかどうかのアポイント電話(アポ電)をかけてから、嘘の請求メールで送るという手法をとってきました。
この背景には、ネットなどで情報商材の購入やオンラインセミナーを受ける人が多く、そうした名簿が詐欺業者の手に渡っていることがあるでしょう。今回の相談者も、相手の業者にすでに本人の名前や電話番号、メールアドレスを知られていたので、自分に非があったのかもしれないと思わされて、話を聞かざるをえない状況に追い込まれています。
リアルな状況に付け入って、だまそうとする架空請求の手口には、今後も注意が必要ですが、今回の相談者が行ったように、お金を払う前に公的機関に相談するという姿勢が身を守ることにつながります。