はじめに

「過去の修繕履歴」を管理組合から借りる

では、毎月の修繕積立金額から「必要な修繕費」は判断できるのでしょうか。島原さんは「素人には金額を見ただけでは分からない」と言い切ります。とはいえ、第3回で説明した「ホームインスペクション」と同様に、修繕積立金の情報が確認する方法があるというのです。

「不動産販売会社を通じて、管理組合から現在の修繕積立金の額と過去の修繕履歴を見せてもらって説明を受けて下さい。最初は家計簿をチェックするくらいの気持ちで構いません。ただ普通の人はマンション管理や大規模修繕の専門的な知識はないと思うので、不安であれば専門家にチェックをお願いすることをおすすめします」(島原さん)

たとえばそのマンションが13年に一度、3,000万円かけて外壁を修繕していたとしましょう。5年後に次の外壁修繕のタイミングやってくるのに、現時点で1,000万円しか貯まっていないという場合は、明らかに足りないと判断できます。「足りない場合は一時的に積立金を増額して直すパターンが多い」と島原さんは話します。つまり、月々の支払いが安く済んでも、修繕積立金で想定外の持ち出しが発生する可能性があるのです。

物件に対する不安は「情報で解決」

ところで、管理費の金額についてはどう判断したらいいのでしょうか。島原さんは「管理費は消えていくお金。物件を見学に行った際に、サービスが金額に見合っているかを考えて」とアドバイスします。たとえば、エントランスや共有スペース、ゴミ置き場の状況を見るだけでも、マンションの管理状況が見えてくるもの。一般論ではなく、「この内容であれば払ってもいい」と自分自身で思えるかどうかで判断するといいのかもしれません。

中古物件に心惹かれても、「値段は適正なのか」「安全性には問題ないのか」と不安を感じて二の足を踏んでしまう人も少なくないでしょう。島原さんは「悩みすぎて結局新築を選ぶという人はとても多い」と指摘します。

「物件に対する不安は情報で解決するしかありません。『不安はあるけれど安いから』という博打のような気持ちで中古を買う前に、複数の不動産販売会社に話を聞いたり、第三者の専門家の力を借りたりして、情報を集めてください。自分が住みたい街、住みたいマンションだと心から思える場所で暮らすことで、絶対に幸福度は上がります」(島原さん)

第1回:リノベとリフォームの違いは何?マンション購入、中古という選択肢を考える
第2回:中古マンションで気になる築年数・修繕履歴・断熱、購入のカギは「築20年」
第3回:「中古マンションの見極め」は"住宅診断のプロ"の手を借りる

島原 万丈

株式会社LIFULL/LIFULL HOME'S 総研所長
1989年株式会社リクルート入社。2005年より リクルート住宅総研。2013年3月リクルートを退社、同年7月株式会社ネクスト(現LIFULL)でHOME'S総研(現LIFULL HOME'S総研)所長に就任。他に一般社団法人リノベーション協議会設立発起人、国交省「中古住宅・リフォームトータルプラン」検討委員など。

この記事の感想を教えてください。