はじめに
外出自粛やテレワークにより、運動不足になっている方は多いのではないでしょうか。いざ自宅でトレーニングを行う場合、どうすればよいでしょうか? トレーナーの比嘉一雄さんによる著書『忙しい人のための自重筋トレ』(光文社)より一部抜粋してお届けします。
ジムは本当に必要?
みなさん、プロレスラーやボディビルダーのような全身筋肉だらけの体型に本当になりたいですか? 多くの人は、そこまでじゃなくていいからお腹まわりが引き締まればいい、あわよくば細マッチョか、ほどよいマッチョになりたい、と考えているはずです。
筋トレというのは、筋肉にかかる負荷、つまり細胞にどれだけストレスがかかるかで効果が決まります。だから、「この鍛え方がより筋肉がつきます」というのは基本的にはありません。ベンチプレスだろうと、腕立て伏せだろうと、負荷(=重さ)が同じであれば、同じだけ筋肉は育ちます。
自分の体重分しか負荷をかけられないのであれば、「そんなに大したことないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、考えてみてください。たとえば、自重筋トレの基本である、プッシュアップ(腕立て伏せ)。プッシュアップをすると、体重の約60%が胸にかかります。体重80㎏の人だったら 48㎏の負荷が胸にかかります。これはつまり50㎏のベンチプレスとほぼ同じです。 50㎏のベンチプレスを身体づくりのために自宅に購入するのはけっこう勇気がいりますが、自分の体重ならタダで簡単ですよね。
背中に関して言うと、懸垂も自重をつかったトレーニングですが、マシンで引っ張るトレーニングはできるのに、懸垂は1回もできない人という人はいくらでもいます。これは、自重筋トレのほうがマシンよりも負荷が強くなる例です。自重筋トレとは、トレーニングの種類、方法の区別のことで、負荷の大小の区別ではないのです。
私が自重筋トレを薦めるのは、自重筋トレが最強のトレーニングだからというわけでは決してありません。身体を効率よく鍛えるためには、「必要かつ十分」な負荷を手軽にかけられるトレーニングだからです。それ以上ムキムキになりたかったらジムでやる必要が出てくるとは思いますが、みなさん、やっぱり「自重で十分」とおっしゃいます。
たとえば今、5分間プッシュアップをずっとできるレベルでしたらジム通いを検討してもいいと思います。が、そんな人は極少数でしょう。むしろ適切な種目を選びさえすれば、懸垂のように自重でもかなりキツいトレーニングになります。実際に私が、ラグビーセブンズの日本代表のコーチの仕事をさせていただいた時も、自重筋トレで代表選手の身体を十分に追い込むことができました。