はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。

都内で一人暮らしをしている会社員です。昨年の年収は530万円ほど。マンションの家賃は9万5,000円です。現在、奨学金を2万5,000円(残高575万円・42歳で完済予定)、親が出してくれた教育ローンも毎月2万円ずつ(残高50万)仕送りで返済しています。私自身、お金の使い方が若干荒いこともあり、手元にはあまり現金が残っていない状態です。


最近、会社が移転するという発表があり、今の住居から遠くなってしまうことと、現在の家賃がやや高いという印象があったため、このタイミングで思い切って移転先の近くでマンションを買うか、沿線の安いアパートにでも越すか、などと考えるようになりました。ただ、今の収入と返済額、頭金がないという状況から、無理をしてもローンで借りられるのは4,000万円程度で、23区中央やベイエリアの1LDKがなんとか手が届く程度、という見込みです。


また将来的に結婚や子供ができたら引越しは避けられないでしょうし、金利が安い今のうちに購入し、30歳前後で高値で売り抜けられないかという思惑があったりします。


逆に沿線のアパートに引っ越せば、今より家賃が2万円以上は下げられるため、教育ローンを前倒しで完済できると思うのですが、「そこまで急いで返す必要はないよ」と言われており、自身も今の部屋からクオリティを下げてしまうのも……という思いがあります。


現在の年収、また負債がある状況でローンを組みマンションを購入することは、やはり無謀でしょうか? 今より家賃の低いアパートに引越して、教育ローンや奨学金の返済にまずは専念すべきでしょうか? 見当はずれな部分があるのは承知の上ですので、ぜひ今度取るべき方法について、ご指導いただけると幸いです。
(20代前半 独身 男性)


深野: 結論から言えば、今マンションを購入することは控えたほうが賢明だと思われます。

ご質問にも記載されているように、将来的に結婚・子供ができた際には引っ越しが避けられないと考えられていますが、そのマンションを借りてくれる人はいるでしょうか?

また、高値で売り抜けたい、とお考えのようですが、不動産価格が上がる保証はどこにもありません。

マンションの購入より優先すべきこと

「マンションを買ってはいけない」というのではなく、買うのであれば終の棲家と思えるほど長く住める住環境、広さなどを確保してほしいのです。

質問者の方の場合、最大4,000万円程度と予算が限られており、頭金がない状況です。さらに奨学金、教育ローンの返済もあるのですから、ライフプラン、キャッシュフローなどから考えれば、今はマンションの購入時期ではありません。

仮に3,500万円のマンションを購入した場合、30年返済だと約11万4,000円、35年返済だと約10万円が毎月の返済額になります(フラット35の金利1.09%、ボーナス併用なしの元利均等返済で試算)。これに管理費や修繕積立金などの支払いが数万円上乗せされるでしょう。奨学金の返済などを含めれば、手取額の半分以上は返済に消え、それが何十年も続くのです。返済以外に毎年の固定資産税、修繕積立金等は今後増えることでしょう。

さらに、頭金を入れられないのですから、マンション購入時の諸費用等も借り入れることになり、言い換えれば毎月の返済額はさらに増えることになるのです。お金の使い方が若干荒いとも記載されていることから、家計収支を貯蓄体質に変えるべく改善する必要があるでしょう。大変かもしれませんが、マンションの購入よりも家賃が安いアパートに引っ越し、教育ローンや奨学金の返済に専念されるべきです。

また同時に家計管理をしっかり行い、1日でも早く貯蓄体質に改善されてください。無理をするよりも地に足をつけて堅実を心がけることが大切なのは言うまでもありません。

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