はじめに

「新しい生活様式」で注目されるリモート化

「新しい生活様式」は人々の行動そのものを変え、新たな枠組みの中で新しい需要や新しい供給構造を形成していくでしょう。「ウィズコロナ」「ポストコロナ」の世界では、「リモート化」を支援する商品やサービスの需要が拡大する見通しです。

小売はEコマース、教育はオンライン授業、金融はオンラインバンキング、医療は遠隔医療・ネット診察、外食はフードデリバリー、公共機関はeガバメントというように、移動が制限される中でも必要とされるサービス市場です。

緊急事態宣言が全国に拡大した4月後半の国内消費動向指数(下図)のコロナ発生前の1月後半からの変化率を見ると、Eコマースによる家電などの売り上げが急増したほか、家庭での食事回数の増加によるスーパーや酒店の売り上げ増、在宅で楽しめる娯楽としてのコンテンツ配信や在宅に伴う光熱費の支出増が顕著でした。一方、移動を伴う外食や娯楽、宿泊、飛行機・鉄道などの需要は大きく落ち込みました。

不要不急の外出を控え、なるべくオンラインで消費するよう推奨されたことで、ネットショッピングや食事のデリバリーサービス、バーチャル体験などの利用が拡大しています。

すでに消費者の購買がオンラインにシフトする流れがあったとはいえ、多くの人が自宅にいながら買い物や食事ができる手軽さを実感したことで、「ポストコロナ」でも宅配サービスの利用は増加するでしょう。小売り企業は従来のような広告や店舗展開を見直す必要が出てくるでしょう。

もっとも、経済活動の再開時には、これまで会えなかった人との外食や旅行、娯楽などへのニーズが高まり、「リベンジ消費」が急増するでしょう。反面、雇用不安や所得が減少した層は、今後より安全志向・倹約志向を強めてくる可能性が高い点には注意が必要です。

なお、今後の消費者の行動変化の一つとして、企業の社会貢献に対する注目度の高まりが予想されます。2011年の大震災時はソフトバンクやユニクロなどの支援策が注目されました。

今局面でも、医療資材の支援や治療薬・ワクチンの開発援助などの社会貢献的な動きをした企業が注目され、企業ブランドの向上が消費者による購入増につながる可能性は高いでしょう。

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注:総合消費指数は、財とサービスから構成される。水色の棒グラフは大項目でそれぞれ左側の赤の棒グラフの財もしくはサービスの構成項目。黄緑色の棒グラフは左側に表示された大項目に含まれる小項目。
注:「EC」項目はオンライン消費のみ。「EC」以外の「業種別消費指数」はオフライン消費とオンライン消費どちらも含む。JCB消費NOWはJCBグループのカード会員のうち無作為に抽出した約100万人分決済データを活用して作成。国内会員に絞っているためインバウンド消費を含まない。
出所:JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」より大和証券作成

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