はじめに
主語と動詞をはっきりさせる
上司に報告する際、こんな言い方をしてしまうことはありませんか?
「『ぜひ、この企画で進めたい』と言っています」
これでは、誰が進めたいと言っているのかがわかりません。他の部署の人なのか、あなたなのか、取引先なのか……、誰が企画を進めたいのでしょう。
ほかには、上司に慌てた様子で、こんな報告をする人もいます。
「急がないとまずいので、了解をいただきたいです」
これも、誰にとってまずいことが起こるのかわかりませんし、何に対してゴーサインを出していいものか、上司には判断がつきません。
このように不鮮明で、混乱を引き起こす伝え方は、主語と動詞がはっきりとしていないことが原因です。大事なのは、「主語と動詞をはっきりさせる」ことで聞き手が余計な疑問を抱かないように配慮することです。「誰が」「何をしたのか・するのか」をはっきりと伝えれば、相手が誤解する余地がなくなります。
また「それ」や「あれ」といった代名詞は、できるだけ使わないようにしましょう。上司への報告で、「あの件に関しては、進めておきますね」などと、会話をしてしまうと、「あの」が何を指しているか上司と部下で認識が違ったということが起きかねません。
重要な話ほど、短く伝える
重要な話ほど、誤解のないように詳しく話さなければと、長くなってしまうものです。しかし「確実に伝えたい話ほど、簡潔にしましょう」と、金子さんはいいます。
話し手は、一生懸命に話していると時間が経つのを忘れてしまいますが、聞き手の集中できる時間は限られています。相手にきちんと伝えたいことがあるときには、自分の持ち時間を意識して、話す必要があります。
そのために意識するポイントは以下の3つです。
・関連の低い話は削る
「関係しそうな情報は全部伝えたい」あまり、関連する情報を話にすべて盛り込んでしまう人がいます。しかし、関連性の弱い情報や、テーマからそれた情報まで話すと、聞き手に混乱を生じさせるばかりか、聞く気をなくさせてしまいます。
相手がどのくらい詳細な話を求めているか、そのレベルを意識しすることが大切です。
・欲張らない
話し手はできるだけたくさんのことを伝えたいと思っていても、聞き手はそれほど覚えられないものです。聞き手に「この話から、何を持ち帰ってもらいたいか」を意識しましょう。
・短く伝える練習をする
そうはいっても、伝えたいことを端的に話すのは意識してもなかなか難しいものです。そこで、金子さんは1分で話す練習をすることを勧めています。1分で話せる量は文章にすると、250字くらい。一般的に1分あれば、メインメッセージと主な根拠を話すことができるそうです。
時計の秒針が1周する間に、どれだけのことが言えるか。日頃から練習をしておくと、とっさのときにも簡潔に伝えられるようになります。
大事な話は事前にレビューする
話したあとで「で、何が言いたいの?」と言われてしまわないために、周囲の人に事前にレビューしてもらうことで、内容の質をあげておくことができます。周りの人も忙しくてそんなことを頼めない、という時は1人でもレビューができる便利な3つの質問があります。
1、「本当?(True?)」
2、「どうして?(Why?)」
3、「で、どうしたい?(So what?)」
(本書75ページより)
「本当?」と「どうして?」は確認をしたり、詳細や根拠を求める質問で、知らないことや予想外のことを聞いた時に自然に出てくるセリフです。これを自分自身に問いかけることで、自分の話のどこがわかりにくいのかに気づくことができます。
さらに、言いたいことを言葉にしてみたけれど、なんだかわかりづらいと思ったら、3の「で、どうしたい?」という問いを自問してみましょう。相手になにか伝えるべきことがあるとき、「自分はどうしたいのか?」「相手にどうしてほしいのか?」を確認すると、本来の話の目的が明確化されていきます。
伝えるべきことはきちんと話しているはずなのに、「自分の考えがうまく伝わらない」と悩んでいる方は、仕事に求められる「成果を出すコミュニケーション」を意識してみてはどうでしょう。
「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方 金子敦子 著
「自分の考えがうまく伝えられない」と感じたことのある人、必読の1冊! 誤解なく確実に伝わって成果につながる「本当に使えるコミュニケーション能力」を、外資系コンサルタント、アナリストとして顧客に「伝わるスキル」を磨き上げた著者が解説。