はじめに
経済停滞を長引かせないために
リーマンショックショック後に2兆円程度の定額給付金など、わずかな財政政策しか発動しなかった当時の麻生政権に比べれば、安倍政権が繰り出した家計などへの所得補償などはかなり大規模です。
また、2008年のリーマンショック後のように、金融市場では大幅な円高になっていません。今後この状況が続くかを筆者はやや警戒しているのですが、現段階では当時と異なり日本銀行の金融政策は、4〜6月の世界の金融市場を救ったアグレッシブなFRB(米連邦準備理事会)と遜色ない金融緩和ができていると評価できます。
ただ、経済活動再開で6月から日本経済は反転し始めましたが、今後の景気復調度合いはコロナウイルスの情勢で変わります。回復が鈍い状況が続くため、先述した潜在的な失業者が顕在化するため経済情勢が一段と悪化するリスクが大きい、と筆者は見ています。
この下振れリスクの蓋然性については議論が別れるでしょうが、少なくとも日本経済は経済活動が歴史的な落ち込みとなったため、脱デフレの対応を一からやり直す状況になりました。このため、経済正常化を後押しするために、金融財政政策が一体となりアクセルを強め、経済成長率を押し上げる政策発動が必要でしょう。
この対応が不十分だと失業・倒産が大きく増え、リーマンショック後の2009年に政権を担った民主党政権下で経済停滞が長引いた時と同様の展開が起こりえます。年内の解散総選挙の可能性を政権の中枢人物が言及するなど、日本の政治情勢が今後大きく変わるかもしれません。
経済成長を後押しする政策を本当に理解して、これまでの緊縮的な財政政策に歯止めをかける政治家の行動が、コロナ後の日本人の経済的な豊かさを大きく左右するでしょう。
<文:シニアエコノミスト 村上尚己>