はじめに
中国では年二回、大きなネット商戦があります。一つは毎年秋に開催される「独身の日商戦(11月11日)」。もう一つは毎年6月に開催される「618ネット商戦」です。
「618ネット商戦」はJDドットコムが設立日の6月18日を記念して開催した事に由来します。現在では、アリババなど業界他社も実施しており、「独身の日」商戦に並ぶ一大ネット商戦として定着しています。
今回は新型コロナが流行して以降、初めてのネット商戦でしたので、中国の消費意欲がどれほど回復しているかという、一つのバロメーターとしても注目されました。
新型コロナ発生後、初の中国ネット商戦
今年の「618ネット商戦」でJDドットコムの取引額は前年比34%増の2,692億ドル(約4兆円)で、過去最高を更新。これは2019年11月の「独身の日」商戦の取引額(2,684億元)を上回る規模でしたので、新型コロナの影響で打撃を受けた消費の盛り上がりを印象付けました。
中国ネット商戦が加速した理由
今回のネット商戦で取引額が過去最高を更新した理由として、(1)低価格を前面に打ち出し、大幅な割引をネット通販各社が実施したこと、(2)アップルやテスラなどが初めて中国のネットモールに出店するなど、参加企業が大幅に増加したこと、(3)「ライブコマース」などコンテンツマーケティングを活用して新鮮味を出し、購買率を高める手法を大々的に実施したことなどが挙げられます。
中でも特に今回のネット商戦では「ライブコマース」が注目を集めました。その理由として、JDドットコムがネット商戦直前に、7億人のユーザーを擁する動画系SNSサービスを手掛ける「快手(クゥアイ・ショウ)」と提携したことが挙げられます。
実際、中国の調査会社によると、大規模な割引キャンペーンの影響を差し引いても、「ライブコマース」で展開するコンテンツ化商品の売上貢献度は高かったとの指摘もあります。中国ライブコマースの今年の市場規模は9,610億元と2019年比で倍増する見通しですので、今後、中国のネット通販業界で「ライブコマース」はさらに重要な役割を担うとみています。