数年前だったでしょうか、ある会合でそれなりの会社に勤務しているアラサー男性が「まだ貯金もそんなにたまっていないし、結婚は役職があがってもうちょっと収入が増えたら考えます」と話しているのが聞こえてきました。遊び人ゆえに結婚は先延ばし的な方ではなく、ごく普通の、どちらかといえば地味で真面目な雰囲気の男性でした。


お金が足りないから若い女性にもてない?

彼が真剣にそう思っていることが伝わってきただけに、結婚に関するデータと向き合うことの多い筆者としては「いや、そこじゃないのに……」と口をモゴモゴさせていました。

ではこの話のポイントは、そこ、ではなくて、どこなのでしょうか?

よく結婚を希望する方が結婚に至っていない理由を独身者本人達に聞いて、その結果を「結婚の壁」と紹介する方法を見かけます。しかし、この方法には相当な「サンプルバイアス」が含まれてしまうことに注意しなければなりません。

独身者が語る結婚の壁のデータは、あくまでも独身者がそう思っている、ということしか示していません。結婚はあくまでも双方向の感情の融合によって起こるものですので、一方的にどちらかが考える理由だけでは、双方がマッチングしなかった理由、彼や彼女が出会えない理由、としては不十分です。

簡単な例を挙げてみましょう。あるレストランが全く儲からなかったとします。儲からないオーナー本人になぜ儲からないのか、と聞いたところ「店の内装に十分なお金がかけられず、おしゃれな店じゃないからだ」と回答しました。

では、この店が儲からない理由は「店がおしゃれじゃないから」でいいのでしょうか。ユーザーの口コミをみると数少ない口コミながら「見た目はおしゃれだけど高いわりにはおいしくない」と書かれているかもしれません。

そうであるとすると、おしゃれじゃないから儲からない理由は、あくまでもオーナーの感覚論であり、実は味の問題、雇う調理師の問題、ではないか、ということになります。もっというと、本来は味の問題であるのに「店がおしゃれじゃないから儲からないんだ」とズレたことを思っているからこそ、オーナーは儲かる店をいつまでたっても持てないのだ、ということになります。