はじめに
CSR教育と株価パフォーマンスの関係
そこで実際、従業員に対するCSR教育の導入を公表している企業の株価パフォーマンスを調べてみました。
東証1部企業を対象に毎年1回、9月末時点で取得できる情報を使って、CSR報告書などの会社が公表する情報により「CSR教育を導入していることを公表している企業」と「導入していない、または導入していても公表していない企業」を分類します。そのうえで、2015年2月から2020年1月までの月次株価収益率の平均を比較しました(過去5年間)。
実は、下図のデータはちょっと工夫しています。CSR教育では、例えば外部からの講師に講演をしてもらったり、数人で集まってグループ内で社会課題に関して解決に向けた討論などが行われたりします。
そうなると金銭面や人材面でも余裕がある会社でないと、なかなかできません。確かにこういった余裕がある会社だからこそ、将来も株価が堅調となることが期待されます。しかし、それって本当にCSR教育が要因で株価に影響を与えていると言えるでしょうか。
そこで、(1)会社の大きさや、(2)株価が保有資産と比べてどの程度買われているか、(3)株式市場とどの程度連動しているか、といった3つの要因を除いて、純粋に「CSR教育を導入している」か「それ以外」かで、どの程度の株価の動きに違いが見られるかを観察しました。これは運用業界の専門家の間ではファーマフレンチ手法と呼ばれるものになります(ファーマとフレンチは学者の名前で、それらの名前からとった手法名です)。
実際の分析結果は年率ベースに直しています。つまり、年間を通じて「CSR教育を導入している」か「それ以外か」の要因で平均的にどの程度リターンとなるのか、それらの間にどの程度の差があるかを見ています。
分析結果は「CSR教育の導入を公表している企業」のリターンはプラスとなりました(0.37%)。一方、「それ以外の企業」はマイナスとなり(-0.06%)、リターンの差はプラスです(0.43%)。
「CSR教育の導入」の要因による株式パフォーマンスが良好なことがわかります。
従業員へのCSR教育を導入するにはコストがかかります。しかし、それだけ企業の社会への責任を果たす自覚を示すものです。このような企業が社会的責任を果たす努力をすることは、企業のイメージアップにもつながるし、宣伝効果もあるという研究報告もあります。
確かに、環境問題を考えない企業の製品って、本当に信用して使っていいの?っていう気持ちにもなりますよね。
CSR教育を導入していることを公表しているかどうかは、会社のウェブサイトなどで閲覧可能です。インターネットの検索を使ってそれぞれの会社のウェブサイトに記載があるかを見ることができます。
投資対象として考えている企業のウェブサイトでチェックするというのも銘柄選別で重要な観点となります。