はじめに

中国のEC市場のなかで「越境EC」と呼ばれる市場が拡がっています。簡単にいうと個人輸入の分野です。2013年頃にはまだ数千億円規模だったこの市場が、直近の報道によると5.5兆円にまで急拡大したということ。

背景にあるのは、中国国内のECには偽物が多いという事情です。お国柄らしい、と笑う人もいらっしゃるとは思いますが、それにしても5.5兆円とは膨大です。

日本企業はこのチャンスを積極的にものにしたほうがよいのではないでしょうか。この観点から越境EC市場について分析してみましょう。


巨大化する中国の越境EC市場

直近の数字によると中国のEC市場は全体で約80兆円規模。そのなかで越境ECと呼ばれる領域が5.5兆円にまで拡大しています。

現在の日本のEC市場は約15兆円と言われています。これを中国の80兆円と比べ、「向こうの市場は大きいな」と思うのもひとつですが、別の見方もできますよね。

「越境EC市場の多くは日本製品を中国人が個人輸入した数字でしょ? だとすると日本の国内市場と同じくらい、この市場が大切になってきたってことじゃないの?」

確かに予測数値をみると、来年2018年には8兆円を超えてしまう勢いですから、日本市場の半分に近づいてきているわけです。日本メーカーや小売店ももはや国内を相手にしているだけでは大きな機会損失をしていると言えるのではないでしょうか。

もうひとつ別の数字をご覧いただきましょう。

話題になっている中国人の爆買いですが、その経済効果は約3兆円だそうです。つまり越境ECは観光需要よりも大きいということ。

つまり、爆買いする中国人をターゲットにしたビジネスを考えるよりも、越境ECに力を入れたほうがよいことがこれらの数字からもわかります。

日本人はどのように個人輸入を使っているのか

越境ECにはどのようなビジネスチャンスがあるのでしょうか? 理解するためにもう一段深く考察してみましょう。

みなさんは海外のECサイトから個人を輸入したことがありますか?

私はそういった経験が多々あります。その理由のひとつは「安く手に入るから」。

例えば、気に入っている薬用の歯磨き製品があるのですが、日本の東急ハンズでは2,700円なのに、アメリカのアマゾンから買うと11ドル(約1,228円)になります。まとめて購入すれば、国際送料を負担しても輸入の方が安くなります。

また、ファッションアイテムの場合は別の理由でも輸入します。

楽天などでは売り切れてしまっている場合でも、アメリカのECサイトではほしいサイズが売れ残っている場合があるのです。ほしいデザインのシャツの場合、多少高くてもアメリカのサイトからの購入もよくします。

では、なぜ中国人は越境ECで買い物をするのでしょうか?

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