はじめに

ウィズコロナの中、中国では保険会社がライブ配信で集客を開始しています。対面販売が規制される中でピンチをチャンスに変え、保険業界からのインフルエンサーの輩出を目指すなど、新たな販売チャネルとしても期待を寄せています。

ただし、行き過ぎた宣伝などから監督官庁も警鐘を鳴らし始めるなど早くも問題も出始めています。


急成長するライブコマース

商品を動画で配信し、視聴者と配信者がやり取りをしながら、購入できるライブコマース。中国ではすでに販売チャネルの1つとしてそのプレゼンスを向上させています。

2016年に開始されたライブコマースですが、2019年のユーザー数は 5.6億人、市場規模は4,338 億元にまで成長しています(下図)。急成長の背景には、新型コロナによる巣ごもり消費の需要もありますが、インフルエンサーの出現も大きいでしょう。

例えば、李佳琦、薇娅といった多くのファンを抱えるインフルエンサーは視聴者と双方向でやりとりしながら多岐にわたる商品を販売し、1商品わずか数分で数千万円を売り上げています。こういった販売手法が現在、若い消費者を中心に広がりを見せています。

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保険業界からインフルエンサーの輩出を目指す

このような状況を背景に、中国の保険業界もライブコマースに乗り出しています。新型コロナ以降、当局の規制もあって、保険の対面販売や手続きはオンライン化が加速しています。生命保険事業において、これまで保険料収入のおよそ半分はエージェント、つまり“人”を介して成り立っていました。

一方、ライブコマースは、手元のスマホで配信が可能であることから初期投資がそれほどかかりません。今年に入ってから、中小の保険会社やブローカーを中心に自社のプラットフォーム上や抖音、快手、淘宝、微信(Wechat)といった外部の媒体を活用した保険のライブ配信が始まっています。

そのような中、5月に、民間最大手の中国平安保険がライブコマースに本格参入したことが話題になりました。そもそも平安保険は早くからフィンテックを事業の柱の1つに据えるなど、金融分野におけるデジタルトランスフォーメーションの成功事例として評価されています。

5月27日、保険分野のトップ陸敏CEOは、自社アプリ「平安金管家」で保険の役割や商品についてライブ配信をしました。同社によると、わずか1時間でおよそ103万人が視聴し、その効果は今後3ヵ月の間に今回視聴して獲得した顧客からおよそ1.6億元(約24億円)の保険料収入がもたらされると推計しています。

また、平安生命保険が抱える120万人のエージェントから優秀な100人を競わせ、インフルエンサーの育成を目指す「平安星(スター)学院」、「平安星(スター)計画」も企画されています。新型コロナによる対面式の販売が規制される中で、これまで育成した人材をどう活用するかは保険会社にとっては大きな問題です。

特に、保険料収入の8割をエージェントが占める平安生命保険にとっては、このような状況をチャンスに変えて、新たな販売チャネルの開拓に乗りだしたといえるでしょう。

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