はじめに
信用取引が簡単に行えるようになって
多くの変化のなかでも、とくに「信用取引」と言われる手法が一部の「セミプロ投資家」から、一般の投資家に広がったことも重要で、もちろん相場にも大きな影響を及ぼすことになりました。
信用取引というと、かつては一部の「投機家」と言われる人たちが行うものとされ、ちょっと怪しげな“仕手筋”たちが株価を動かすために利用することもありました。
自身が保有している資金以上の取引をするのでリスクが高く、大手証券会社では数千万円の資金がないと信用取引口座を開くことができませんでした。なかでも株券を借りて株を売る「空売り」と呼ばれる信用取引の手法は、損失が大きくなる可能性があることから、一部の投機家以外が利用することはなかったのです。
信用取引の売りが流行りだした要因としては、米国のサブプライムローンの破綻から起こった世界的な金融不安“リーマンショック”が挙げられます。この時、株が暴落するときに株券を保有していなくても売れるのであれば大きく利益が出たということで、信用取引での売りが流行りはじめました。
また、リスクを押さえながら株主優待を得る方法としてネット証券などが推奨したことや「NISA(少額投資非課税制度)」で株式を保有するメリットを生かす手法として「信用取引の売り=空売り」が注目されました。
ただ、まだまだ「逆日歩」や「貸し株料」というコストに対する知識がともなっていないことも、相場そのものを“異質な相場”にしている要因となのだと思います。
異常な事態が「常態化」している
信用取引の売りが増えると、逆日歩という異常事態が起こります。しかし最近ではこの異常な事態が“常態化”しています。
本来であれば、逆日歩になると、株券を借りて売っている空売りは慌てて買い戻すことが多く、株価の上昇要因となるのですが、こうしていったん上昇すると、買い戻しで買われ過ぎた株価が再度下落して、落ち着くところに落ち着くもの。
ですが、森永製菓(2201)やカゴメ(2811)などは、すでに半年以上も逆日歩がついて上昇が続き、買われ過ぎの水準まで買われています。いわば異常な株価となっているものが多くみられるのです。
こうした買われ過ぎの水準にあるものはバブルとも言えますので、どこかで修正が行われることになると思います。
日本の金利が上昇する局面で一斉に修正が起こるということもありそうですし、ちょっとした日経平均の変化で一斉に売られるということもあるかもしれません。
いくら異常な状態が常態化したからといって、この状況が永遠に続くということはないと思います。
最後にもうひとつ、日経平均採用銘柄の入れ替えが相場を変えることも考えられます。
8月1日から日経平均採用銘柄から東芝(6502)が除外され、新しい銘柄が採用されますが、もし任天堂(7974)や村田製作所(6981)のように株価の高い銘柄が採用されるということになれば、相場の大きな波乱が起こるかもしれません。