はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。
証券会社に勤務しています。証券会社での年収やボーナスは、長い目で見ても短い目で見ても相場にかなり左右されるものとなっています。現在、私は1,500万円ある金融資産の多くを株式(国内・海外両方)で運用しているのですが、全体で見ると、株式自体のリスクはかなり取っているのかなと思っています。例えば、金融業界の人はもっと債券で運用したほうがよいなど、現在の職種も考慮した運用を行ったほうがよいのでしょうか?
(30代後半 既婚・子供あり 男性)
内藤: 資産形成には、自分で稼ぐ方法とお金に稼いでもらう方法の2つがあります。この2つをリスク分散させて、車の車輪のようにうまく組み合わせていく。これが長期的に必要な資産を手に入れる最善の方法だと思います。
最も大切なのはリスク管理
このような資産形成において最も重要なのはリスク管理です。リスクとは資産の振れ幅を指します。
例えば、株式は債券に比べ価格の変動が大きいですから、リスクの高い資産ということになります。
さらに外国株式になると株価変動のリスクに加えて、為替変動の影響もあります。いずれにしても、株式中心の資産運用はリスクが大きく、資産が変動する可能性が高いということです。
一方で、仕事で得られる収入に関していうと、証券会社の仕事はマーケットの変動に大きく左右されます。証券会社の業績は株価の変動との相関が高いといえますから、資産運用で株価が下がれば、収入も減ることになります。
つまり、自分で稼ぐ方法とお金が稼ぐ方法、この2つが同じ方向に向かうことになってしまい、リスク分散になりにくいということです。
リスクをどの程度まで取るべきか?
ここで問題になるのは、「2つを合わせたリスクをどの程度まで取るべきか?」ということです。これは、正解がひとつに決まっているものではなく、個人のリスク許容度によって決まるものです。
もし、今の仕事をしながら株式中心の資産運用を続けている現状に、精神的ストレスを感じるというのであれば、それはリスクの取りすぎでしょう。
その場合は、株式の一部を債券にシフトして、仕事と資産運用の動きが同じにならないように調整すべきです。
また、債券だけではなく、コモディティのような本業の証券業務との相関が低い資産を組み入れることも、変動率を下げ、ストレスを感じなくするためには有効です。
金融機関に勤務しているからといって、必ずしも株式運用をすべきではないという結論にはなりません。金融業界といってもさまざまな業務があり、特に証券会社の場合は日本株式の相場と業績が連動することが多くなります。
一方、銀行などは株式市場の影響を受けにくく、外資系の会社であれば日本のマーケットよりもグローバルな資本市場の環境によって会社全体の業績が左右されます。それぞれ影響を受けるものが違うのです。
自分の会社の給与やボーナスがマーケットの影響をどれくらい受けるのか。そしてそれを前提にして、どの程度のリスクを取ることが質問者の方の精神衛生上、快適なのか。ご自身で納得できるリスクの取り方を考えてみてください。