はじめに

「今年の休暇はどうする?」例年であればこの時期のドイツは休暇の行き先や過ごし方の話題で持ち切りですが、今年は様子が違います。統計データのオンラインデータベースを提供するスタティスタが「旅行好き」と評するドイツ市民も、コロナ禍においては旅行に対して慎重です。

ドイツ公共放送連盟が6月に実施したアンケート結果もこうした姿勢を反映しています。回答者の51%が「今年の夏は自宅で過ごす」と答え、夏の旅行を断念しました。一方「旅行に行く」と回答した人の場合も、行き先は「ドイツ国内」が多数を占めており、国境をまたぐ移動を躊躇する様子がうかがえます。

国内の旅行先選びにもいつもと違う傾向が見られます。独ツァイト紙の報道によると、今年の圧倒的な人気はバルト海や北海、フレンキッシェ・シュヴァイツといった自然あふれる場所。それ対して、ベルリンなどの都市は苦戦を強いられています。


越境と人混みを避けた旅行先

こうした今年の傾向は筆者の周囲でも顕著です。海外旅行を計画している人は見当たらず、休暇の予定を聞いたほとんどが1週間程度の国内旅行に出かけると答えました。

例えば、ベルリン在住の男性はバイエルン州の山間にある村に行く予定を立てています。「休暇中に誕生日を迎えるので、山小屋のような場所で友人2人と一緒に3人だけのパーティーを計画しています」。

また、ドイツ南部に住む別の男性はニーダーザクセン州北部にある実家で休暇を過ごすつもりだと話しました。「実家の周りは自然に囲まれており、両親もまだ高齢ではないので帰省することにしました。日帰りでヴァッテン海にも足を伸ばす予定です」。

ヴァッテン海とは北海沿岸の干潟地帯のことで、ユネスコ生物圏保護区にも登録されています。ロックダウン解除以降の早い段階からこの地域には客足が戻っており、筆者が参加した5月30日のヴァッテン海のウォーキングツアーにも10名ほどが参加していました。

ツアーの主催者によると、マスク着用義務もツアーの運営母体によって対応はさまざまで、着用を義務付けるところもあれば、参加者同士の距離が保たれる場合はそれほど厳しくないところもあります。

ただし、夏休みのハイシーズンを迎えてこうした緩やかな状況は少し変化しています。北ドイツ放送などの独メディアは、山や海に人が押し寄せる光景を報じており、各地の自治体は人の密集を避けるための対策に追われています。

慎重な対応を見せる都市の観光産業

一方、都市部は例年にない静かな夏を迎えています。ベルリンのブランデンブルク門横にあるツーリストインフォメーションの職員は、今年のベルリンの状況をこう述べました。

「いつもに比べると今年は観光客がとても少ないです。特に3月から7月中旬までは壊滅的でした。7月中旬以降は、若干人足が戻った印象です」

ブランデンブルク門ブランデンブルク門

確かに、この時期はたくさんの観光客が訪れるブランデンブルク門や博物館島、アレクサンダー広場も人が閑散としています。

観光客だけでなく、都市の観光におけるアクティビティを担う博物館や美術館もコロナ禍においては非常に慎重な対応を取っています。例えば、多くの博物館が入場人数に制限をかけたり、入場エリアを制限したりと、入場者数を把握するための工夫を取り入れました。

博物館島博物館島

中には閉館したままの場所もあります。夏休みになると日本から多くの観光客を迎えるベルリン森鷗外記念館も、今年は扉が閉まったままです。職員は「再開の目処はまだはっきりとは立っていません。大学付属の施設なので、関係機関との調整も複雑です」と話しました。

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