はじめに

「売春」の項目で登録して納税

──シャフォゼさんご自身は性労働者ですか?

はい、18歳から性産業に従事していますから、今年で20年になります。社会保障・家族手当保険料徴収連合(URSAFF)にも「売春」の項目で登録して、納税しています。つまり他の職業と同じように、勤続42年の後には年金を受給できます。

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──レスペランスさんの話では、フランスの性労働者は「売春」で登録することを避け、別の職業で登録・納税する人が多いようです。理由は、職業に伴うデメリットを回避したいから。シャフォゼさんがあえて「売春」で登録しているのはなぜでしょう?

私は10代の頃から性労働者の権利獲得のためのさまざまな社会活動をしてきました。多くの人が、私が何者であるかを知っています。その私が性労働者であることを隠して、別のフリーランスの職業登録をしているとしたら、それは全く無意味です。

しかし残念ながら、性労働者であることのデメリットは避けられません。個人的な経験としては、職業が原因で住宅ローンを拒否されたことがありました。離婚の際に子供との関係が制限されるなど、あらゆる場面で不利な立場におかれる可能性はあります(筆者注:フランスの親権は離婚後も父母共同で行使されるが、親の経済状況等によって責任・権利の度合いが調整されることがある)。

性労働者がタブー視される理由

──フランスでも他の国々同様に、性労働はタブー視されているというわけですね?たとえ社会に必要な職業だとしても。その理由は何だと思いますか?

キリスト教文化圏、主にヨーロッパでは、売春はマグダレン保護施設をイメージさせます。18世紀以降、「堕落した女」を保護・収容する目的で教会に創設された「マグダレン洗濯所」です、ご存知ありませんか?売春は罪であるばかりでなく、それを行う性労働者は判断力も不十分で、迂闊な人間と考えられがちです。要は子供と同じ。だから守らなければ、堕落した世界から救わねば、となってしまう。

──「マグダレン洗濯所」そのものが悲惨です。そのイメージに直結するとなると、ほとんど目を背けたいような、触れたくない、忘れ去りたい事柄だと想像します。

この誤った認識の一因は、フランス政府がいまだに路上での検挙数からのみ性労働者の数を割り出していることにあります。インターネットのこのご時世、エスコートガールは路上に立ちません。イギリスやスイスの調査結果では、路上で仕事をする性労働者はわずか13〜15%です(2010年)。つまり路上からは性産業の全体像を掴むことはできませんし、それどころか路上という最も不安定な場所で仕事をしている人々は移民や不法労働者、つまり最も弱い立場にある人たちなのです。

路上だけが取り上げられるために、彼ら・彼女らのイメージがフランスの性産業の実態だと誤認されてしまう。もちろん移民や不法労働者、売春を強制させられている人は守られるべきですが、それはそれとして、彼ら・彼女らがフランスの性産業の全体ではありません。逆に、ほんの一部に過ぎないのです。

──レスペランスさんのように、障害者専門の性労働者もいます。

私たち性労働者は子供ではないですし、自分の意思で選んでこの仕事をしています。同時に、性産業は社会にとって必要ではないと考える人も多いですし、いろいろな考え方があります。だからこそタブー視せずに、イメージを一般化することは重要。私個人としては、この職業は社会に優しさや温かみをもたらすことができると考えていますよ。

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