はじめに
全米の小売店株は軒並み下落
このニュースを受け、あるアナリストは「アマゾンはホールフーズという冷蔵庫を全米に手に入れることになった」と表現しました。
おもしろい表現ですが、たしかにアマゾンフレッシュ全米展開の最大のボトルネックはこの買収によって消えたことになります。
実はアメリカの株式市場には「アマゾン恐怖(Death by Amazon Index)」という株式指数があります。
この指数に組み入れられた会社は全部で54社。これはアマゾンの躍進によって業績が悪化すると考えられている小売業のリストで、百貨店のJCペニー、書籍チェーンのバーンズ・アンド・ノーブル、事務用品のステープルズなどが並びます。
そのアマゾン恐怖指数が、今回の買収発表後に急落しました。
個別銘柄でいうと、アマゾンとあまり競合しないと考えられている小売最大手のウォルマートが5%の下落。顧客層が富裕層という点で近いコストコは7%の下落を見せました。
食品スーパー最大手であるクローガーは9%下落。もっとも大きく下げたのはカルフォルニア州を収益基盤とするスーパーマーケットのスマート・アンド・ファイナル・ストアーズで、株価は19%も下落しました。
アマゾンの買収で胸をなでおろした経営者は?
そして冒頭でお伝えしたように、アマゾンの株はこれらの銘柄とは対照的に3%も上昇しました。増加した時価総額は170億ドル(約1兆9,000億円)ですので、ホールフーズの買収額よりも株価の上昇が上回る結果となったわけです。
株式市場はこれを「アマゾンはホールフーズを実質無料で手に入れた」と表現しましたが、それはあながち間違った表現ではありません。
そして実は今回の買収によって、胸をなでおろした経営者がもうひとりいます。
それはホールフーズのジョン・マッキーCEOです。ホールフーズの経営陣は、ここのところ株式の8%を握ったファンドからの収益向上への圧力に苦しんでいました。ファンドがよく行う手口ですが、経営陣の悪い面を強調して責めることによってほかの株主を巻き込んで圧力を高めるのです。
今回の買収発表後、ホールフーズの株価は29%も上昇。高値で売り抜けることに成功したファンドはもはやホールフーズの株主ではなくなり、マッキーCEOは顧客を向いた経営に専念することができるようになるというわけです。
このようにさまざまな小売企業を巻き込み、明暗を分けた今回の買収劇ですが、消費者の関心は「今後、アマゾンがどれほど便利なサービスを始めるのか」に移っています。
アマゾンフレッシュはアナリストの予想通りの展開をみせるのか。それとも期待をさらに超えた動きとなるのか。アマゾンの今後から目を離せそうにありません。