はじめに

為替市場では7月下旬から円高ドル安基調が鮮明になっています。一時は104円台前半をつける場面もありました。新型コロナウイルス再拡大が懸念される中、為替市場で何が起きているのでしょうか。その背景と今後を展望してみたいと思います。


円高というより、“ドル売り”

一般に、日本円という通貨はリスクオフ時に買われ、リスクオン時に売られやすいのが特徴です。では、直近の円高進行はリスクオフ環境が原動力だったのでしょうか。

確かに、新型コロナウイルスの感染拡大が続いているほか、米大統領選に向けて米中両国の対立がエスカレートする可能性があります。一見するとリスクオフ環境のようで、円高ドル安の理由として全く的外れということはないでしょう。安全資産とされる金価格の上昇もリスク回避の動きのように見えます。

しかしながら、米国株式市場の動向などからはリスクオフムードがそれほど伝わってきません。なにより、円はドル以外の通貨に対しては総じて軟調で、円全面高というリスクオフ時の特徴が窺えません。

円高というよりもドル安という表現が適当で、1ドル=104円台を示現したのはドル売りの激流に巻き込まれた結果と言えそうです。

EUが合意した歴史的な経済立て直し策とは

では、ドル全面安の背景は何でしょうか。この問いには一つの通貨が関わっています。それがユーロです。

欧州連合(EU)の首脳会議は7月21日早朝、新型コロナウイルス対策として、7,500億ユーロの復興基金案で合意しました。今回の合意はEUにとって画期的なもので、「北欧と南欧の対立」というEUの構造的な問題にコロナ禍が風穴を開けた格好です。

EUによる歴史的な合意の後、一旦は利益確定売りでユーロは弱含んだものの、その後、再び騰勢を強めました。ユーロ高ドル安に牽引される形で、他の主要通貨も対ドルで上昇し、ドル全面安の流れが鮮明になったと言えます。